正常の人では、立ちあがったときにふらついたり、気を失ったりすることはありませんが、このような症状の出る時を起立性低血圧症といいます。

立ちあがったときが最も症状は出やすいのですが、他に、赤信号で立ち止まったり、帰宅して玄関先でドアを開けようとしている時や、炊事仕事中、立ち話などでも出現します。要するに立ちつくしているときに出やすい症状なのです。
フラーッとした時にしゃがみ込んだり、横になれば直ぐに回復しますが、意識を無くして倒れる時、場合によっては打ち所が悪く大怪我することが問題です。

血液は水分なので当然下に貯まろうとします。
正常の人では、脳や神経が複雑なコントロールを瞬時に行い、足の静脈に貯まっている血液を、上方にある心臓に向かってあしの筋肉を使ってもみあげます。この作業を milking と呼んでいますが、起立性低血圧症の患者さんの多くは、元来血圧が低いことに加え下肢の筋力の弱い人が多いようです。
心臓への血液の戻りが減少する結果、心臓から送り出される血液量が減少し、結局脳への血液循環も減るためこのような症状が起こるわけです。
脳や神経に原因のあることは極く希です。一般的な原因として知られているのは、糖尿病、薬(利尿剤・高血圧症の一部の薬・精神安定剤など)や、貧血、脱水等です。

診断のための簡単な検査として、臥位と起立で血圧を測り、20mmHg以上の血圧低下を認めたらまず間違いありません。10分間の起立試験(Shellong test)やTilting Test も行われますが、血液検査はあまり意味はなさそうです。

治療として極めて有効と言うものはありませんが、ビタミンB12を通常使います。
なにより大切なのは、日頃から次のことを意識して行動し、症状が出にくいようにすることです。

1.起きるとき勢い良く立ち上がらないこと。ヨッコラショと起き上がる。
2.起き上がる前に体を動かすこと。血の巡りを良くします。
3.立ち尽さない。足を動かすと症状がでにくのです。
4.水分の適当な補給。血液量を増やします。
5.フラーッとしたらとにかくシャガム。頭を守ることが一番大切です。
6.足腰を鍛えて下さい。血液を揉み上げるのは筋肉です。

モロキ内科
萬木 信人