1960年代に大学に入学してまもなく、5月の連休あけ頃から急に大学に行かなくなる学生が見られるようになり、せっかく大学に入ったのにその原因がわからないことから五月病と言われるようになりました。
 
現在では大学生に限らず、入学、進学、就職してまもなく連休あけ頃から、登校や出社したがらない人たちのことを五月病と呼んでいます。
 
しかしこの時期に学校や会社に行きたがらない人をこう呼んでいるだけで、実際の原因はさまざまです。原因がさまざまだから治療法もさまざまです。
4月には新しく入学したり、入社したり、クラス替えがあったり、担任が替わったりと環境に変化が生じる時期ですので、新しい環境に慣れられずに行けなくなっている人もいます。環境に慣れるには時間がかかることを話して、せきたてずにしばらく時期を待つ(静観する)ことも必要です。
 
大学生の場合は自身の志望もはっきりしないうえに、本来の志望でない大学に先生の指導で合格した不本意合格が一番多いようです。もう一度自分の進路についてじっくり考えてみることも必要です。
 
退却神経症というのもあります。朝が起きられずに授業には出席しないが、サークル活動やアルバイトは普通にする状態で、本人もそう悩んでいるようには見えないので発見しづらいのですが、大学から成績表などが送ってくると、親が首をかしげながらも驚くことがあります。
これは「自分が何になればよいのか」、「どういう仕事につきたいのか」を大学に入る前に十分考えずに、ただ大学に入るためだけに勉強してきて入学した後、目標を失っている状態です。自分自身でも気づきにくいことで、目標を見つけるのに時間がかかる場合もあるので、専門医に相談したほうがよいでしょう。
 
その他睡眠・覚醒のリズムがうまくとれず、朝が起きられずに学校に行けない特殊な場合もあります。専門的な治療が必要です。
 
これ以外にも環境が新しくなったために症状が出現して精神疾患もありますので、一度かかりつけ医に相談されるほうがよいと思います。

サザンこころのクリニック
南 秀雄