◎特集 橋下徹氏が やりたかったこと すでにやったこと やろうとしていること

 

取材3 府職員人件費カットが意味すること〜府民生活切り捨てへの突破口

       大阪教職員組合書記次長 田中康寛さんに聞く

七月二三日、府議会本会議は二〇〇八年度予算案を一部修正し、自民・公明・民主の賛成で可決した。

成立した予算は、府民施策切り捨て、人件費を削減する一方で、大型開発・同和事業を継続するなど府職員、府民要求と真の財政再建に背を向けたものとなっている。

人件費問題では、

1) 〇・五%圧縮修正したものの、一般職で三・五%〜九・五%と異常な賃金削減
2) 一般職五%と全国に例を見ない退職手当の削減
3) 府立学校教務事務補助員ら三五〇人の解雇
4) 労使交渉でなく議会で人件費削減を決定するという地方公務員の賃金決定ルール違反
5) 慎重対応を求めた府人事委員会の府議会に対する意見に反する

などの点から、到底受け入れられるものでなく、撤回に向けての取り組みに全力をあげる。

職員の間には「府財政の赤字は野放図な大型開発などが原因なのに、なぜ職員に責任転嫁するのか」「今の時期の職員だけに退職手当も含めて見せしめ的にやられるのは納得いかない」と不満が充満している。一方、世論調査などでは府民の圧倒的多数が人件費削減に賛成している。「大阪府は民間会社なら倒産会社」との偽りを主張し、巧みな世論誘導で職員と府民の分断が図られ、次は府民に犠牲を押し付けてくるのは明らかだ。

「教育日本一」をめざすというが実態は「教育切り捨て日本一」

知事は公立教育の充実、強化を重点政策として宣伝し、「教育日本一」を目指すとしているが、その中身は全く逆で
「教育切り捨て日本一」というべきだ。

特に配慮したとされる「障がい者」や「いのち」に関する予算では通学バス(一八〇〇万円)、泊行事への看護師付添(三〇〇万円)の増額はあるものの「支援教育充実」予算は軒並み削減、予算全体で五億六八〇〇万円の大幅削減となっている。

「いじめ・不登校・問題行動対策」でも、充実を強調しながら実際は二億一一〇〇万円の削減、「公立中学校へのスクールランチの導入」は二〇〇万円を予算措置したが、「学校給食の振興」予算は全体で三二七三万円削減、緑化推進に資するとして「小学校運動場の芝生化」に一〇〇〇万円予算措置の一方で、環境農林部の緑化関連予算は三億七〇〇〇万円以上も削減と実際には縮小、切り捨てを進めながら、充実・強化を主張する偽りの宣伝を行っている。

私学助成についても、府民レベルの猛反対の前にわずかな修正は行ったが、大幅削減の本質は何ら変わっていない。

教育内容では、できる子、できない子で差をつける選別と切り捨ての教育を進める習熟度別指導を小学三年からと中学全学年に導入、府立高校八校の学区を撤廃など、「勝ち組」のための、一部の子どもだけに笑顔を保障する「格差社会を拡大する教育」を推し進めようとしている。「高校の土曜補習」「小・中学校への放課後学習」も同様の狙いで、「つまずき対策」には目を向けようとしない。すべての子どもへの教育保障が解体されようとしている。

教員の出張旅費を二〇%カット、宿泊を伴う場合の日当や食費がカットされるためすべての教職員に持ち出しが強要される。修学旅行など生徒を引率する場合、二四時間全てが仕事の時間であり、仕事をしながら自己負担するのは納得いかないとの声もある。

こうした教育切り捨てに対し、危機意識が広がり、教職員・PTA・地域が一体となった運動が出て来ている。PT試案(二〇〇八年四月発表の「財政再建プログラム試案」)で三五人学級の廃止が出されたが、一、二年で実施した三五人学級は小学校長会の八〜九割がやって良かったと評価し、三、四年にも広げていきたいとの要求だった。府PTA協議会が進めた「三五人学級等署名」は三週間余りで一〇五万筆を集約した。この運動には私たちも連合の教職員組合とも共同して支援した。知事側はこの声を無視できず、三五人学級は存続した。私学助成削減反対運動では高校生自らも立ち上がり、大きな共感を呼んだ。


財政再建の目的は何か

財政再建を理由に、強引ともいえる人件費削減や府民生活施策を削減していく背景にあるものは何か。そのことを明らかにし、府民の間に理解を広めていくことが重要だと考える。

財政再建の目的は、府民のことを考えているのではなく、借金のない身軽な大阪府になって、一日も早く道州制に移行
したい、大阪をなくして関西州にして、財界が思い通りに操れる行政にして行きたいとする財界の意図に応えるためではないのか。そのことを知事は公然と語りはじめている。知事は府民の期待とは正反対の「大阪府つぶし」をすすめようとしている。

強引な分だけ、矛盾も広がっており、私たちは維新プログラムの撤回を求め文化や教育を守ろうとする府民との共同の
運動を広げていくことに全力をあげたい。

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