◎特集 橋下徹氏が やりたかったこと すでにやったこと やろうとしていること

取材2 子どもって未来じゃないですか

       人形劇団クラルテ代表 高平和子さんに聞く

高平和子

たかひら・かずこ
人形劇俳優。1953年札幌市生まれ。小学校5年
よりアマチュアにて人形劇を始める。1961年、
人形劇団クラルテ入団。2006年、劇団代表と
なり人形劇普及と創造のため奮闘中。

子どもたちがナマの人形劇を含む演劇に触れる機会がずっと減って来ている。それへの行政の援助が減って来ている。橋下知事の施策はその仕上げです。

橋下知事のやり方が私たちの活動との関係で問題なのは、「文化関連事業」の重点化という名の切り捨てという直接面よりも、市町村への補助金、私学助成のカットにより、結果として学校、幼稚園での行事としての上演の機会が減らされたり回数が減らされたりすることが大きいです。観たことがない先生が増えていくと、先生が児童・生徒に観せようとは思わないです。

子どもにとっては観劇は、食べることと同じくらい重要です。感動はナマから届きます。バーチャルなもの、メカニックなものより、ナマは子どもたちが自分で選ぶ力を身につけるようになります。未来は子どもたちの中にあるのに、どうしてこんな予算を削るのでしょう。

今年、劇団六〇周年公演を手塚治虫さんの「火の鳥」で取り組み、大阪市内六〇箇所をまわりました。子どもがちゃんと生きていける未来を考える作品で、演じた私たちが力をもらいました。六〇〇〇通の感想文をつなげて大きな鯉のぼりを作り、五月五日に飾りました。

国際児童文学館、府立青少年会館、ワッハ上方、ドーンセンターの廃止方針には納得いきません。児童書のメッカや舞台人の公演場所がなくなるのは由々しいことです。

ヨーロッパでは子どもたちは九九・九%ナマの芝居を観る環境が行政の補助により整えられていることを思い起こすべきでしょう。各地に市立の劇団、市立の劇場があって、子どもと親とは極めて低廉な価格でナマの芝居が観れる。ベルリンなどでは地下鉄代も込みで五百円くらいで観劇できる。教育にはお金をかけて当たり前なんです。ミュンヘンにならって札幌市にはこどもの劇場やまびこ座、こども人形劇場こぐま座があり、おおきな役割を果たしています。土日に三〇〇円くらいで観れる。杉並区は文化のための各家庭補助を出しがんばってますね。

大阪では劇団は財政逼迫してたいへんです。よくがんばってるなあと自分で思うくらいです。やめていく仲間もいるし、ホール使用料が上がるので入場料を上げると観客が減っていく。お母さんたちは千円くらいまでなら子どもと行けるけど、三千円となるととても無理と言われます。私はそんな時こそいい作品を上演しようと思います。

文化人の中には、橋下知事に反対しているだけではあかんと言い始めている人もいますけど、私たちは子どもの代弁者のつもりです。

劇団クラルテ:一九四八年、戦後の大阪の焼け跡から生まれる。クラルテとはフランス語で「光」「光明」という意味。フランスでアンリ・バルビュスやロマン・ローランが起こした平和運動「クラルテ運動」から名付けた。人形劇専門劇団として上演、講習、人形製作。全国規模で子どもから大人まで楽しめる上演活動を展開している。
主な作品に近松門左衛門作「女殺油地獄」、シェークスピアやブレヒト作品、宮沢賢治作「セロ弾きのゴーシュ」など。二〇〇八年創立六〇周年記念公演「火の鳥」上演、「大阪市内六〇カ所公演」。

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