音楽の裾野をもっと大きく − 「中山正治ジャズ大賞」を受賞して 

                                      ジャズドラマー  澤崎 至

 

「今年の『中山正治ジャズ大賞 アマチュア部門賞』に澤崎さんとブルージン・ジャズ・オーケストラ(Bluesin' JazzOrchestra・略称BJО)が決まりました。おめでとう。授賞式と記念演奏会は大阪ブルーノートで六月二九日の日曜日夜。詳しいことはまた連絡しますから」。

関西ジャズ界の大御所・ベーシストの宮本直介さんから突然電話をいただいたのが二月の末、まさに青天の霹靂というべき受賞でした。この「中山正治ジャズ大賞」は、一一年前病により急逝された日本を代表する関西在住のドラマー、故中山正治氏を偲んでご親族と友人のミュージシャンによって創設された賞で、毎年優れた活動をしたプロとアマチュアの中堅・若手のジャズミュージシャン一人ずつに与えられる名誉ある賞なのです。

 

ドラマーとして演奏活動三七年

BJОは今年創立一八周年

 

私は大学時代からドラムを始め、現在もBJОのバンドマスターを務めるほか、小川理子さんのボーカルとピアノをフィーチャーしたKОPというモダンスイングのバンドやボプ・フリークス(Bop Freaks)というテナーサックスのカルテットを率いて、芦屋のレフトアローン(Left Alone)や梅田のニューサントリーファイブなどでライブ活動を続けております。

若干のブランクはあるものの演奏活動三七年というアマチュア活動歴を評価していただいたのかなと思いましたが、私はむしろBJОの活動を評価していただいたことをとても嬉しく思っております。少し詳しくBJОについて紹介したいと思います。それにしても過分の評価をいただいたものだと恐縮しております。

ブルージン・ジャズ・オーケストラは、一九八五年一〇月に結成され、今年で創立一八周年を迎える一八人編成のアマチュアのビッグバンドです。メンバーは会社員・エンジニア・医師・教員・会社経営者等様々な職業を持った人々で構成され、年齢幅はなんと約五〇歳超、全団員二三名の内女性が六名在団しています。

主な活動は年一回のBJО主催のライブハウスでの演奏他、パーティや自治体などの開くコンサートへの出演などです。昨年は計六回出演の実績です。レパートリーには、カウントベイシー、オリバーネルソン等の比較的オーソドックスでスインギーなものを多く取り入れています。

 

メンバーとともに心一つ自分たちの音を追求する喜び

 

BJОは特定大学のОBバンドではなく、経験や志向また技量も様々ないわば草の根の市民オーケストラとして出発しました。特に演奏技量が優れているわけでもなく格別秀でたプレーヤーを抱えているわけでもありません。でも、メンバーがわずか三、四人しか集まらないときでも、決して腐らずあきらめず継続してきた、そんなアマチュアバンドとしての姿勢を評価していただいたのではないかなと思っています。

アマチュアバンドに共通する最大の悩みは、仕事をもつ社会人バンドとしてなかなかメンバーが揃わないことですが、最近では不況の影響やリストラの嵐からも無縁ではありません。メンバーのうち二人が突如、東京と名古屋に転勤になりました。

活動が不可能になるかと思われましたが、最低月一度の日曜練習にはなんとか参加できるよう可能な限り仕事を調整して活動していますし、朝七時からの緊急手術の厳しい勤務ののち疲れ果てながらも午後からの練習に駆けつけてくるメンバーもおります。

そんな状況ですが、メンバーとともに心一つに自分たちのサウンドを追求することは、何にも優る喜びなのです。

私たちアマチュアバンドは、音楽の裾野をもっと大きく広げるために、もっと音楽ができる環境を豊かにしていくために、幾ばくかの役割を果たし得るのではないかと思っております。この受賞を機会に、関西のジャズ文化・音楽文化のいっそうの発展に貢献したいと思っています。

 

さわさき・いたる

有限会社ソフィア 代表取締役

1947年、大阪市生まれ。大学在学中は、KMP(Keio MusicPlayers)New Sound Orchestraで活躍。

現在は、中小企業分野でのコンサルタント。経営管理・フランチャイズ展開の戦略指導を主な活動分野としている。著書には『いま、勝ち残りの経営者像』第一会計刊・1996年

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