被曝健康調査の目的と概要
 
(1)調査の目的
 
 調査の直接の目的は、以下の3点です。第一に、事故が起こってから現在(調査日)に至るまでの健康被害の実態を明らかにすること。第二に、JCO臨界事故当時の住民一人一人の行動調査を通じて、放射線による被曝線量を推定し、住民被曝の正確な実態を明らかにすること。そして、これらを通じて、健康被害と被曝との因果関係を可能な限り明らかにすることです。
 
(2)調査対象
 
 事故から臨界終息までの間に、JCO転換試験棟からおおむね500b以内(1ミリシーベルト以上被曝したと推定される距離)におられた方々(JCO周辺の工場の従業員、商店勤務者、学校児童、園児、通行人等を含む)を調査対象としました。国は線量調査範囲を350b圏の避難区域内に限定し、それ以外の人はすべて切り捨てています。私たちは、これらの人を含めて被曝調査をする必要があると考えました。「おおむね」としたのは、距離に加えて時間も考慮する必要があるからです。例えば、遠方から500b地点を車で通過した後、短時間でまた遠ざかっていった人より、600b地点にずっと居た人の方が被曝線量が高い場合があるからです。また、500b以遠の方、例えば2q離れていても、身体の調子が悪いため、あるいは不安でしかたがないと希望された、すべての方に調査させていただきました。
 
【表1】調査対象者の滞在地点内訳













 
JCO転換試験棟からの距離 人数(人)
  65m〜100m以内   26
     〜200m以内    7
     〜300m以内   48
     〜400m以内   11
     〜500m以内   23
     〜600m以内   43
     〜1000m以内   29
     〜2000m以内   11
     〜3000m以内    9
     〜4000m以内    6
     〜5000m以内    1
     〜6000m以内    1
      合 計  215













 
 
注)多くの方が移動しているため、分類の便宜上、転換試験棟から最も近い地点に居た場合の距離を採用しました。65メートルは転換試験棟からJCO敷地外の最短距離の地点です。ただし、被曝評価については、後で説明するように、移動に伴う距離の変化を考慮しています。
 
 
(3)調査方法
 
 調査方法は、基本的に調査員が個別面談する聞き取り方式を採用しました。これは第一に、健康実態調査は、看護婦など医療従事者が一項目ずつ面談しながら行う方法が、実態をより正確につかめると考えたからです。第二に、被曝線量評価を厳密に行うためには、臨界から終息までの行動(居場所、建造物の構造、遮蔽物の有無・種類、滞在時間、移動手段と移動距離・移動時間等々)を正確に記録することが決定的に重要であるからです。
 
 
(4)調査期間及び調査対象者の内訳
 
 調査日は、2000年7月1日〜2日、10月21日〜22日、11月18日〜19日、12月9日〜10日、2001年1月27日〜28日、2月17日〜18日の合計12日間で、のべ70名近くの医師、看護婦、検査技師、保健婦、事務員が調査と健康相談にあたりました。調査は、「被害者の会」の協力によって、住民の皆さんにあらかじめビラや口コミで日時をお知らせし、東海村舟石川コミュニティセンターで行いました。1、2月は、厳しい寒さや冷たい雨の中、住宅地図を広げながら、訪問を行いました。
 調査には221名の住民の皆さんが応じてくださいました。そのうち、被曝線量評価のための行動調査の有効回答者数は215名、健康実態調査の有効回答者数は208名でした。人数に差があるのは、直接面談することができず、行動が不明・不正確であったり、行動調査のみ希望された方がおられたからです。
 
【表2】 調査対象者の内訳








 
年 齢
12才未満   19   22   41
12〜20才    3    9   12
20〜30才   11   13   24
30〜40才    6   18   24
40〜50才   14   25   39
50〜60才   14   21   35
60才以上   22   24   46
   総 計   89  132  221








 
 

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