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早期幕引きを狙う臨界事故刑事裁判!
住民・労働者を被曝させた
JCO・国の責任を明らかにせよ!
4月23日、東海村JCO臨界事故で、業務上過失致死罪と原子炉等規制法違反罪などに問われた6人の被告とJCOの初公判が行われた。起訴された被告は全員、起訴事実を全面的に認めた上で、過失は小さいとして情状酌量を求める方針。そのために弁護側は10人程度の証人申請する。一方検察側は冒頭陳述のみで証人を全く立てない方針で、ここに事故原因を徹底的に追究するつもりが無いことがよく表れている。また裁判所はというとそれに協力すべく年内に11回の公判予定を早々と決め、わずか1年ほどで判決を出すというから驚きだ。検察や裁判所の姿勢から、国内で最悪の原子力事故、一般住民を大量に被曝させた事故、中性子線を1000人以上の人々に浴びせた世界で初めての事故を起こした責任と真相究明する構えは全く感じられない。事故責任を6人の被告のみに押しつけ、JCOの社長はおろか、親会社である住友金属鉱山や国・文部科学省に対する責任には触れず、原子力に対する逆風を避けるために早期に幕引きしようとする意図が見え見えだ。私たちは、事故原因の究明と事故責任を徹底して追及するよう求めていきたい。
臨界事故は起こるべくして起こった−JCOのずさん体質、それを放置し続けてきた国!!
JCOは1987年に行った社内調査で、認可を受けていないウラン貯蔵容器や仮配管などの存在が発覚したにもかかわらず、科技庁の立ち入り検査に備え法令違反の恐れのある設備を一時撤去するなど、確信犯的な違法・逸脱操業を行っていた。しかしこれはまだ序の口でそれ以降次々と組織犯罪は続く。JCOの危機管理委員会は92年8月、臨界事故の危険性を指摘したが、「その発生確率は低い」として具体的対策は何も行わなかった。また85年以降臨界管理などに関する教育はほとんど行わず、92年8月の臨界教育はわずか15分に過ぎなかった。このように危険な原子力を扱っているという認識などまるで感じられない異常操業が長年に渡って行われ、国によって黙認され続けてきた。臨界事故はまさに起こるべくして起こったのだ。JCOを指弾するのはもちろんのことだが、これだけ長きに渡るJCOの組織犯罪を放置してきた国の責任も問うていかなければならない!
「夫はJCOに殺された」−妻の悲壮な声
臨界事故で大量の放射線を浴び、多臓器不全で死亡した大内久さんと篠原理人さんの妻による供述調書には、刻々と近づく死を感じながらの闘病生活、残された子供を育てていくことへの不安、そして会社への不信感が述べられている。大内さんの妻は「チェルノブイリの被曝者は、のどが渇いたと言うけれど、本当に渇くんだね、という夫の訴えを聞いた。その後、容態が悪化しつらそうに痛みを訴える。長男(10歳)の前で涙を流すわけにもいかない。まぶたも閉じれないのがいたたまれなかった。これから息子を1人で育てていかなくてはいけない。夫はJCOに殺された」と訴えた。
篠原さんの妻は、被曝直後の夫の様子として「少し顔が赤いくらいで、朝家を出たときと変わっていなかったと感じた。しかし容態が次第に悪化し、1ヶ月後の10月末には顔がパンパンに腫れ上がりやがて包帯が巻かれた。大内さんが死亡したことを話すと、俺もそうなるのかなと泣いていた。医師から死期が近いことを告げられ、夫の手を握ると皮膚が硬かった。そうして主人は死んだ。」この悲痛な妻の叫びに検察はどこまで応えようと言うのか?
核燃料を取り扱うことの危険性、臨界の恐怖について何一つ教えられることの無かった現場の2人。にもかかわらず、冒頭陳述では臨界を引き起こした直接の当事者は2人と言わんばかりのくだりがある。「死人に口なし」をいいことに亡くなった2人にも責任の一端を負わせ自分たちの責任を軽く見せようとする卑劣なやり方だ。残された遺族を谷底へ突き落とす陳述を許すことは出来ない。
肝心要の国・文部科学省の監督責任追及、住民被曝について触れない検察!
この裁判で決定的に抜け落ちている大きなポイントが2つある。一つは長年に渡って会社ぐるみの違法操業を続けていたことを見逃してきた国・文部科学省の監督責任である。検察は何も問題していない。弁護側は被告の情状酌量を求めるための法廷戦術として「国の監督方法などにも事故の遠因があった」と言うだけである。この枠組みからは国の責任は何一つ問われない。事故責任を一民間企業だけのものに止まらせてはいけない。親会社は旧財閥の住友グループであり、背後には原子力推進を国策としている国・文部科学省が存在しているのだ。
もう一つは、いわれなき被曝を強いられた住民についてどう触れられるかについてである。冒頭陳述では少し触れられただけで、そのことに対する報道は全くない。今回の事故の最大の被害者である一般住民についてまともに取り上げようとしない刑事裁判とは一体何なのか。文部科学省の「被曝被害は出ない」というギマンを後押しするだけでしかない。私たちの調査で明らかになった住民の健康被害をどう説明するのか。
この2つの問題が明らかにされなければ、裁判の焦点は「事故当時たまたまその職務にあったため起訴されるに至った」6被告の過失の度合いに限定されるに止まるだろう。この裁判はJCO、国、検察、どの当事者にとっても早期に終結させ、事故を過去のものとし、原子力推進の障害を取り除くことが最大の目的であることは明白である。私たちは、JCOの事故を起こした責任を追及する事はもちろん、早期幕引きを狙う検察に対する監視と厳しい批判の目を向けて行かねばならない。
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現地最新情報
「被害者の会」、JCOに慰謝料求め、提訴検討!!
「被害者の会」は、昨春から進めてきたJCOに対する健康被害に対する補償交渉がまとまらない場合、JCOを水戸地裁に提訴する検討に入った。JCOはこれまで「事故との100%相当因果関係を記載した医師の診断書を持ってこい。そうすれば検討する」と加害者であることを微塵も感じさせない傲慢な態度に終始してきた。
同会顧問の伊東良徳弁護士によると、JCOに主に請求しているのは、@被ばくに対する慰謝料、A被ばくの健康被害に対する慰謝料と医療費の補償、B営業損失や土地評価額の減少など経済的被害の補償―の三点。訴訟でも同様の趣旨で請求する。伊東弁護士は「原子力事故で被ばくした住民らが慰謝料を求める訴訟は、全国で初めてになる」と話し、事故との因果関係が争点になるとみている。
大泉事務局長は、「JCOの姿勢が変わらない限り、提訴する方針。訴訟を避けたい会員もおり、原告の人数などはこれから詰める」と話している。
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被曝健康実態調査を終え、現在最終集計中!!
2月に、合計6度にわたる現地調査を無事終えることが出来ました。JCOと国に健康被害に対する補償を要求してゆくための武器になればと、現在最終報告完成に向け作業中です。報告は今しばらくお待ち下さい。またカンパをくださった皆さん、本当に有り難うございました。
心よりお礼を申し上げると共に、今後とも被害者支援に役立てていきたいと思います。
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