藍生ロゴ 藍生2月 選評と鑑賞  黒田杏子


敗荷や無頼に生きてみたかつた

(東京都)牛嶋 毅
 75歳・牛嶋さんのとても率直な感想として共感いたします。ともかく読書人。三菱自動車のソウル支店長で、「ソウル俳句会」の会長をつとめておられた時に、「ソウル俳句会」に招かれて講演や吟行交流会などに参加した折にお目にかかりました。何でも知っている。東大時代からのご友人多数。東京育ち。お子様方はみなご立派に独立。おしどり俳人。不満不足の無い日々の中でのつぶやき。無頼といえば寂聴先生。上野のあたりをぶらついておられての句でしょうか。いいですね。



榠櫨一ついただき金子医院辞す

(東京都)遠藤由樹子
 皆野町の兜太先生の生家は、金子千侍先生のご長男桃刀さんが継いで、金子医院であり、そのお屋敷の一角は記念館となっています。遠藤さんはある日皆野町を訪ねられ、庭に生ったかりんの実を頂いたというのです。父上との合意により、医業を継がず、歴史にのこる俳人として文字通り現役大往生を果たされた兜太先生。その生家を訪ねる人が絶えないという事も嬉しい事であると私は考えております。



焼芋に根性のありまだぬくし

(大阪府)森尾ようこ
 ようこさんも48歳になられました。何と見事な俳句。焼芋もこのように詠みあげられてよろこんでいると思います。兜太先生がこの句をごらんになられたら、よろこばれたでしょう。実に愉快、かつ立派な句です。


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