藍生ロゴ 藍生7月 選評と鑑賞  黒田杏子


飛花落花研究室を得たる朝

(兵庫県)藤田 翔青

 やりましたね。藤田翔青先生!。ついにこの日到来。われらが車椅子の俳人は、〈ていねいにあゆむさくらを見てあゆむ〉〈大学の着任式のさくらかな〉〈初講義初ゼミナール花の雲〉〈嫌はるる勇気春満月天心〉の句とともに、二〇一八年七月号「藍生集」の巻頭に輝きました。私が「NHK俳壇」に出ていた大昔、この人はたしか高校を卒業、浪人中。投句者と番組の主宰者かつ選者として出合ったのでした。ハンディを克服され、ついに大学で教える立場に立たれた。いまや学会出席のため、車椅子で海外にも出かけておられる。新誌「いぶき」の副編集長のこの人は三十九歳。大きな未来が行く手に拡がっている。札幌で大勢の皆さんと祝杯を。



野火放つ男昨夜の貌ならず

(岡山県)秋岡 宣子
 昨日の貌ならずでなく、昨夜の…。ここが巧いですね。秋岡さんの句はどちらかといえば内省的なものが多い。この句はドラマを秘めているところがいい。しっかりとした構成で成功。



廃校の決まり九名卒業す

(徳島県)加治 尚山
 俳句はスゴイ。たった一行十七音字でこれだけの世界が詠める。切れもよく、ここに加える言葉は不要。人口減少の町や村は日本中に激増中。これは徳島県からのレポート。


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