藍生ロゴ 藍生4月 選評と鑑賞  黒田杏子


会へぬこと知つてゐながら賀状書く

(愛知県)近藤 愛

 投句ハガキを一枚一枚手にしてゆっくりと目を通す。1句1句読んでゆく。「北海道・東北ブロック」のハガキの束から目を通すこともあるし、いきなり東京・神奈川の手重りのする束からスタートすることもある。近畿各県から読みはじめることもある。近藤愛さんのこの句に出合ったとき、選句のちょうどまん中ごろ。エッと立ちどまった。この人はほぼ毎月四句欄に載る。しかし、巻頭ということにはなかなか至らない。賀状の句はいろいろとあった。その中で近藤愛さんのこの句を今月は巻頭に。と決めてホッとした。何となく涙ぐましくなって、選句作業に拍車がかかった。



若水をもて吸飲を満たしけり

(埼玉県)山崎志夏生
 山崎さんは東京例会の責任者。誰からも好かれる人で、ユーモラスな句を得意とされている。仕事も超忙しの日々。それだけではない。この人は一軒の家にご夫婦ふたり、それぞれのご両親を看取りつつ暮らしておられる。吸飲に若水を注いで…。老親の介護にあけ暮れる句友は多い。山崎さんの優しさに打たれ、新年の東京例会での高得点句であった。



肩にあたる異国の金貨初詣

(東京都)小田 静世
 小田さんは初詣に出かけられた。ともかく大勢の人の集まる神社だったようである。列はゆっくり進む。ようやく神前に至る。作者の列にもうしろにも外国の人が居られたのだ。賽銭箱に向かって投げられる硬貨。肩にあたったそれ金貨。それもどこか異国の。金貨と初詣のとり合わせが抜群。


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