藍生ロゴ 藍生10月 選評と鑑賞  黒田杏子


シンプルに生きるときめて墓洗ふ

(岐阜県)土屋美也子

 土屋さんの句には独特の存在感、風格があると感じてきました。いつもご自分の生き方、生きる姿勢のような内容をさりげなく詠み上げた作品を寄せてこられる。この句など、どこにもむつかしい表現はなく、さらりと書かれていますが、墓洗ふの座五が実に巧いと思います。八十二歳の作者。シンプルに生きようと考える人は多いです。しかし、生きるときめて墓洗ふ。このジャンプ、見事ですね。



四つに割るメロンに星の匂ひして

(北海道)五十嵐秀彦
 七月の北海道の集いを、あざやかに成功に導いて下さいました。itakの青山酔鳴さんの八面六臂の仕事ぶり。皆びっくり、感動。この句、第一日目の二百五十余名の参加者による大句会で大好評を得た作品。私も頂きました。五十嵐秀彦のポエジーがナイーブに出た佳吟。メロンと星の匂ひ。感心しました。



白シャツを眩しとおもふさびしとも

(神奈川県)高浦 銘子
 眩しとおもふさびしとも。このニュアンスはいかにも銘子調。若いときから、この作者の手離さない感覚。これ以上でも以下でもないというところに踏みとどまっての一行。


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