藍生ロゴ 藍生4月 選評と鑑賞  黒田杏子


句を詠めば雑念の消え年新た

(新潟県)斉藤 凡太

 凡太さんは投句用紙に九十一歳と書いてこられた。私と同じ寅歳、一廻り先輩。私はこの八月十日で満七十九歳。数えで八十歳、傘寿である。出雲崎の「渚会」に招かれ、凡太さんにはじめてお目にかかり、例の間引菜やの句を激賞したとき、私は会社を定年退職する年であったから六十歳。お互いに句友として二十年近く交流を重ねてこられたことを私はありがたいと思う。本名斉藤房太郎。俳人凡太さんはこの句の通り、悠々と新年を迎えられたのだ。



冬霧を貨物列車が運びゆく

(埼玉県)はたちよしこ
 絵本を見ているようでもある。外国の貨物列車。そこにこの一行が書いてあったらぴったりだ。日本航空が長年主催してきている「地球歳時記」。世界中の子どもたちのHAIKUがその子の描いた絵と共に掲載されている。まとめてそれが一冊になっている。以前私も序文を寄せたことがあるが、今年は夏井いつきさんが執筆している。その本の世界とはたちさんのこの作品が重なって見えた。



一足せば白寿の母と年迎ふ

(埼玉県)矢部 保道
 母上に対する愛情あふれる一行。百歳を越えた日本人が何万人もこの国に居られる。しかし、大切な母上が九十八歳でお元気なのである。ともかく、一足せば白寿という表現は言えそうで簡単には言えない。


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