藍生ロゴ 藍生1月 選評と鑑賞  黒田杏子


寂けさの端に身を置く十三夜

(栃木県)沖山 充弘

 近年、この作者の句作への打ち込みぶりには目を瞠る。教師としての仕事の合間をほとんど吟行にあてて国内各地をとび回っている。単独吟行と合わせて、条件のある小句会にも参加。東京例会にも出席して研鑽を積んできた。その積み上げの上に恵まれたこの一行は作者生涯の代表句となるのではないか。



咳をしてちよつと見上げる十三夜

(長野県)竹村 雄次
 小学校の先生である竹村さんの句には少年性があって、それが魅力。こういう先生に学ぶ生徒達は幸せである。カッコいい先生。



ややありて明るくなりぬ後の月

(栃木県)半田 真理
 ここまで十三夜、後の月の句が三句並んだ。それぞれに働きざかりの年代の作者である。この句、肩の力が抜けているところがいい。さらりと詠んだと見えて一行の存在感は十分にある。理屈ではなく感覚。頭ではなく直感。巧く作ろうとしない人に恵まれた句だ。


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