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春の蝉天を住処として発ちぬ (岩手県)菊池 節子 |
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最愛の人を見送った妻の句である。菊池さんは高校の文化祭のために、戦後、花巻市郊外の小屋に独居していた高村光太郎を訪ね、誌の原稿やノートを借り出し展示したりした活動の日々を大切にしている。合唱団に加わり、宮沢賢治の作品を土地の言葉で朗読する技術も身につけておられた。盛岡での全国大会での賢治作品の朗読はすばらしかった。伴侶との永訣をこのように作品化されたことに共感と敬意を覚える。 |
葉桜や瓦礫底より将棋盤 (岩手県)熊谷 トキ子
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陸前高田の句会で菅原和子さんをサポート、誠に謙虚にして頼り甲斐のある人であり、和子さんにとっては姉のような存在の無二の句友であった筈。あの日から三ヶ月も経った。この将棋盤を大切にして暮らしていた人の運命を想う。 |
被災地に泣きたい時は草むしり (岩手県)細川 悦子
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句が巧みかどうか。気が利いているか否か。センスがいいかどうか。それも作品を評価する際のひとつの基準ではある。しかし、細川さんのこの句に対して心を揺さぶられない人はいない。句を詠み、五句を選んで投句された被災地の仲間に私は励まされるばかりである。文句を言わず、ぐちを吐かず、草むしりをする細川さん八十代のある日あの時。 |
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