藍生ロゴ 藍生1月 選評と鑑賞  黒田杏子


新米を研ぐ音楽のしづかなり

(東京都)安達 潔

 二十周年記念特別号の安達さんのプロフィールは「1952年東京生れ。95年藍生入会、句作を始める。タクシー運転手」と実にシンプル。連載中の「ドライバー日誌」のファンは多く、私もその一人である。早稲田の露文出身とのことですが、毎日お弁当を自分で作って仕事に出られるとか。ひとり暮らしでも友人は多数。この人の投句用紙には切手が貼られていない。タクシーを止めて、投句ハガキを「藍生」事務所のポストに投げこんで走り去られるようです。



鴉などしばし紛るる鷹柱

(鹿児島県)三嶋 幸雄
 「ミシマユキオではありません。ミシマサチヲです」とくり返しながら、この人は吟行を重ねている。ほとんど単独行のようで、吟行の記録などもよく残しておられる。鷹柱に鴉がまぎれこむことがあるなどとは考えたこともなかった。鷹柱の句として異色の作品である。



十月の雨の野原の雀たち

(神奈川県)石川 秀治
 田んぼに群れる雀なら誰でも知っている。これは野原に群れる雀。それも十月の雨の日の景。雀たちも作者もどこかでこころが結ばれているような不思議な一句の世界。もしもこのような光景に出合ったとして、あなたは句に詠まれますか。石川秀治さんらしい作品として頂戴した。


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