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石蕗黄なり母子順調に老ゆるなり (埼玉県)山口 都茂女
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母と娘、共に齢をしっかりと加えてゆく。母子順調に老ゆるなりとはなかなか言えない。現実にはそういう状況であっても、このような思い切った、そして的確な表現には到達できない。山口都茂女という作家の、これは見事な境涯句である。石蕗黄なりの上五のあっせんも見事で、一字一字、すみずみまで作者の「気」のゆきわたった佳句だ。 |
点滴に脳洗はれて秋深む
(三重県)小川 多恵
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病床にある仲間が増えている。あの颯爽として美しい和服姿を楽しませてくれていた多恵さんが倒れた。しかし、必ず立ち直れる。書家であれば身の不随意はどれほど哀しいことであろう。しかし、句を詠むことで、人は必ず蘇る。この見事な句を杖として立上がる。 |
遠き街に日のさしてをる紅葉かな
(埼玉県)寺澤 慶信
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何か夢の中の風景のような印象も受ける。西洋の古い絵画を観ているような不思議な心地のする句である。作者の身ほとりの紅葉が美しく炎え上るほどに染め上がっていればいるほど、この句の世界は、静謐である。元気で忙しくひたすらに走り廻っているような時には決して詠めない世界。この作者の作品世界は深みとひろがりと詩性を獲得しつつある。 |
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