藍生ロゴ 藍生4月 選評と鑑賞  黒田杏子


大切に預かる冬の流れ星
        
(東京都)安達 美和子
 こんなに純真な俳句作者がこの世に居られる。何度もこの一行をくちずさんでいるうちに、あたたかな涙が静かにあふれてくる。真冬の夜空にはキラキラと星が輝いている。冬の星座がくっきりと手にとるように見えた夜。ふっと星が流れた。その一期一会の出合いの瞬間をこのように詠み上げた作者。冬のその流れ星はいつまでも作者の心の玉手箱に大切に蔵まわれて守られているのである。



栗ほどの鳥の眼過ぐる冬至かな
(ニューヨーク)岩崎 宏介
 宏介さんのニューヨーク駐在は期間延長となった由。昨年のクリスマスにそのことの報告と共に私はガラス製の実に美しいぺ−パーウェイトを贈られた。「すずめクラブ」の選者としての歳月も長くなった。どんな大きな鳥がこの人の身のほとりをよぎったのか。夢の中の景のようでもあるが、冬至かなとニューヨークで詠む句友の存在は事実だ。



かるた取る恋の行方を知ればこそ
(東京都)岡崎 弥保
 大学は卒業しているが、東女大白塔会に参加している若い作者。編集者だと思う。いかにも現代的なセンスが面白い。長身にあふれる黒髪をなびかせて、〆切時刻ぎりぎりに句座に駆けこんでくる作者。現代の和泉式部かも知れない。若さはすばらしい。



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