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揚羽来るまだあたたかき骨壷に (東京都)坂本宮尾 |
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五句いずれも母上との訣れを詠んでいる。大往生を遂げられたことが伝わってくる。たまたま私は宮尾さんのこの母上に二度お目にかかっている。ロンドンに留学中の旧姓坂本文子さんが夏草新人賞を青邨師より授与され、私が代理で賞状を受け取った折、そして帰国されてのちの、東京一ツ橋学士会館での結婚披露宴の席で。末っ子の宮尾さんが勤めと家庭の仕事がある身で、看護を尽くされた。その日々を知る私はこの投句ハガキに感動し、大きな励ましを与えられたのである。 |
立葵いま少年の姿して (神奈川県)岩田由美
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まさに少年、少年そのものの風姿で作者の眼前に佇つのはご子息であろうか。母親としての想いが過不足なく詠まれている。もちろん、立葵そのものが少年の姿をしている、その風情であると解することも出来る。この作者の句作の出発点において、私は細見綾子の句の世界と共通する感性と美意識を感じとったが、この句にもそのことをあらためておもい出した。 |
ひきがへる続々と来る夜はやさし (東京都)磯部まさる |
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不思議な句である。どこか幻想的でありながら、リアリテイがある。上五、中七が実景描写のように見えて、下五の夜はやさしで磯辺まさるという作者の構築した世界が提示されることになった。 |
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