藍生ロゴ 藍生3月 選評と鑑賞  黒田杏子


三十年先の約束雪ぼたる
        
 (愛知県)近藤 愛
 新人賞を獲得してのちの歳月をこの人は着実に歩みつづけてきた。俳句は才気だけで詠みつづけることは出来ない。一日一日、一月ごと、そして年ごとの努力の積重ねを怠ればただの作者になってしまう。
 近ごろのこの人の作品を見ていて、新たな活力が戻ってきていると感じていた。俳人近藤愛の本当の力はこの句から発揮される。期待して待とう。



とても寒いとても暗い土手に居る
(大阪府)田中 櫻子
 この作者のファンは藍生俳句会の中だけにいるのではない。俳壇という広い世界にも支持者が存在している。自分自身の内面をしっかりととらえ、それを一行十七音字の世界に展開できる力を備えた二十代前半の作者だ。



枯萩のトンネル雀とくぐりぬ
(東京都)中村 祐治
 この作者は六十代半ば。近藤さんや田中さんより四十年年長である。しかし、真清水のような新鮮な句境、やさしさにあふれたみずみずしい感性は同年代の作者の中で群を抜いている。近く仕事の場を辞し、歩き遍路で、千四百キロの八十八ケ所札所寺を巡るという。その句日記を「藍生」に寄稿して頂きたい。満行ののちの作者に期待している。



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