1/32スケールへの回帰
 
 1968年最後に発売されたAYKの2つのニューシャーシ。 その1つは、前ページにて紹介した"R:555-D"フォーミュラ用シャーシであるが、もう1つのニューカマーはちょっと違ったものだった。
1/32スケールというと、メジャーレースの正式種目から外れて久しいが今時(1968−69年当時)このスケールのシャーシを発売してどうするのだろうか?!と当時中学生だった私は首を傾げたものだった。
私は営業サーキットのレースはほとんど興味がなく、もっぱら友人と延長したホームサーキットで毎月のようにレースを楽しんでいたが、スケール的には全て1/24で行っていた。 1/32では、遊びで(すべて遊びではないのか?!)タミヤ製1/32ミニレーサーシリーズのLOLA T70MKIIIをモノグラムの古い1/32シャーシに取り付けて遊んでいたぐらいであった。

 そんな中、発売されたAYK製の1/32スケール用インラインシャーシフルセット。 一見ゴールドロッドシャーシに似ているがフローティグマウントはなく、それこそ幻の初代ゴールドロッドシャーシの縮小版のようなシャーシである。 モーターは、FT-16Dを使用する。モーターさえ別に購入すれば、あとはすべて揃っているという便利ものであった。
このシャーシ、どこかで見たようなシャーシと思いきや、雰囲気がタミヤ製1/32 Lotus30のブラックシャーシにどことなく似ているような気もする。
 
 さて、AYKの1/32 R: 555-Eであるが、このシャーシの発売意義について考えられるのは、1968〜69年当時マニアック志向になっていた日本モデルカーレーシング界に、入門用のカテゴリーはないに等しい状態であった。そこで、ニチモなどで販売を続けているホームサーキットを利用して、新しいモデルカーレーシングファンを掴む狙いがあったのではないだろうか。 そして、AYKとの合意があったかどうかはわからないが、クリヤーボディメーカーのクライマックスからも1/32の"Ford MKIV"や"Ferrari P4 CAN-AM"も発売されることになり、ある程度の土壌は揃ったと思われる。

 しかし、結局1/32スケールは盛り上がることはなく、静かに消えていった。 スモールスケールが人気となるのは、大分後の1990年代まで待たなくてはならなかった。 スモールスケールで言えば、HOスケールもMODEL CARS誌創刊後に爆発的にブームとなったが、やはり短命であった。 そして、遂に1/32スケールブームとなったのは、リアルな再現が素晴らしいFLY製などの完成品が発売されてからだと思う。
 
 
 
 
 
 
 
 
1/24ゴールドロッドシャーシの機能を備えた1/32用シャーシが誕生!!

 1/32スケールのR: 555-Eシャーシセットが発売されてから3〜4か月経った頃、突然1/32スケール用 "R:555-F"シャーシ単体が発売された。 そして、1969年6月号「模型とラジオ」誌内の「モデルカーレーシング教室」において、このシャーシ紹介記事が書かれていたので紹介したい。
 このシャーシは、前作 "R: 555-E"セットに含まれているシャーシとはまったくの別物で、新たな設計によるシャーシであった。
Eタイプにはなかった“フローティグマウント”は1/24並みに装備されており、ロッドシャーシではなく、真鍮板(たぶん・・・資料がない)にシルバーメッキされたものをプレス加工した本体とパーツで組み上げたシャーシである。
 かなり性能的にはすぐれているかとは思うが、面白いことにAYKの誌上広告には一切出ていない。
この年のAYK正式カタログを持ち合わせていないのでわからないが、カタログには載っていたのではないかと想像する。
やはり、先行きがわからない1/32シャーシよりも1/24スケールシャーシを全面に押し出してアピールしているということなのだろう。
  
 下の萩原氏の解説を読んでいて「あれっ?!」と思ったことがある。 なぜ「シャフトがインチサイズ」なのだろうか。
単純に考えると、このシャーシは、海外向けのものだったのではないかと想像する。
今の、プラフィットシャーシがそうであるように、海外では、意外と1/32スケール市場があったのではないだろうか。それが本当の発売理由で、日本市場では宣伝するまでもないと思ったのかもしれない。
また、1970年に発売される「1/32スケール アングルワインダーシャーシ」もシャフトがインチサイズであるところからこれらの仮説も意外と当たっているかもしれない。
 
 
 
 
 
 
 
 
タミヤ製1/32スケール "LOTUS 30"のブラックシャーシについて

 1966年にタミヤから発売された1/32スケールLOTUS 30は、当時としてはかなり完成されたシャーシだったと思う。しかし、低重心なシャーシは、1/24のA,B,D型シャーシのように単体での発売はなかった。さらに、1/32スケールのシリーズ化もされることはなかった。
やはり、メジャーレースで1/32クラスが消えたことによる影響もあったかもしれない。
その後、タミヤから発売された1/32スケールモーターライズキットの“ミニレーサーシリーズ”は、ボディも他社の1/32と比べると格段にリアリティがあったと思う。 少し年代的に1〜2年先に登場した実車をモデル化しているので何とも言えないが、それらのボディは、スロットカーとしてLOTUS 30の後継モデルになるものだったかもしれない。なお、同時期に発売されていたタミヤ製ホームサーキットに付属されていた1/32スケールの2台(LOTUS 30 & Ferrari 246P)には、全く違う簡易シャーシ(ゴーセンの初期シャーシに似ている)が合わせられていた。
 
 ついでながら、このブラックシャーシもついて調べてみよう!

 まず、個人の考えから言うと、このシャーシは、1/24を含めて私の好きなシャーシの1つである。 なぜならば、外見からして実車のモノコックシャーシなどを連想させる造形美を持っていることと、高速走行中にシャーシ底面よりエアーをモーターに送り込むためのルーパーがなんともメカっぽくてカッコいい!!
 実は、1966年当時、小学校6年生であった私は、このキットを幸運にも手に入れることが出来た。そして、ボディは、なんと水色に塗って、太い白のストライプをデカールでだったか忘れてしまったが、ボディの真ん中に描いたと記憶している。 走行は、スポンジタイヤを削らないで走行したためだろうか、よくスピンしていたと記憶している。シャーシ両サイドに取り付けるウエイト(丁度、1/24スケールの同社キットのLOLA T70のブラックシャーシにもある両サイドに取り付けるウエイトと同じである)も影響しているかもしれない。このブラックシャーシは軽い故の問題点もあったのかもしれない。同じく当方所有のニチモのマンタレィは、当時評判だったニチモ製ゴムタイヤを履いており、組み立ててすぐにスピンもせずに走行できたが、ブラックシャーシはそういうシャーシではなかったと思う。かなりシビアでタイヤやウエイトなどのセッティングが必要だったと思われる。

 このシャーシは、「田宮模型全仕事ビジュアル版2」によれば、材質はアルミ製で、それをプレス加工したツーピースシャーシである。よって、1966年5月号モデル・スピードライフNo.7の紹介記事で、材質はジュラルミンと書かれているのは間違いである。
 写真は、ヴィンテージスロットカーに詳しい友人に頂いた写真である。 一部オリジナルでない箇所があるとのことであるが、今でも幻のシャーシと言われている。

 この仕上がりを見ていただこう!!なんとも機能美を感じるシャーシではないだろうか!!
そして、1969年に発売されたAYK製 R: 555-F シャーシを比べてもらいたい。 何か共通するものを感じてしまうのは私だけだろうか。 新しいメカを装備したR: 555-F であるが、基本のスタイルは両方とも低重心を意識したもので、スロットカーに多いラダーフレームとは違うテイストを感じる本格的なシャーシであったと思う。
 そして、個人的な希望だが、タミヤ製のこの1/32ブラックシャーシを拡大した1/24スケールバージョンもぜひ見てみたい気がする。
 
 
 
 


TOP : 1/32 scale black chasiss of Tamiya's Lotus 30 in 1966.
The material of this chassis is duralumin.
(C) Photographs by my friend.
 

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