●破産管財業務と不動産の譲渡所得税

弁護士 村上 英治

先日、ちょっと調べ物をしたので書き留めておきます。
私の備忘録のようなものです。

 私は、破産管財人をすることが少なくないのですが、個人の破産者の破産管財人をしていて、破産管財業務の一環として、その所有不動産を売却することがあります。
 このようなとき、不動産の譲渡所得税は課税されないのでしょうか?
 ちょっと調べてみました。
所得税法9条は、「次に掲げる所得については、所得税を課さない。 」としており、同条10号で、次の通り定めています。
「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である場合における国税通則法第二条第十号 (定義)に規定する強制換価手続による資産の譲渡による所得その他これに類するものとして政令で定める所得(第三十三条第二項第一号(譲渡所得に含まれない所得)の規定に該当するものを除く。)」
 そして、国税通則法第2条第10号(定義)に規定する「強制換価手続」とは、次の通りとされています。
「強制換価手続 滞納処分(その例による処分を含む。)、強制執行、担保権の実行としての競売、企業担保権の実行手続及び破産手続をいう。 」
 そうすると、通常は、破産手続という強制換価手続による資産の譲渡によって譲渡所得が発生したとしても、所得税は課されないのだといえます。
もっとも、破産手続でも、ごくまれに100%配当がおこなわれる場合もあるので、このような場合は「資料を喪失して債務を弁済することが著しく困難である場合」に該当しないことになると思われ、所得税の納税義務が発生するのではないでしょうか。
 もっとも、私自身は、これまで数十件の破産管財人をしてきましたが、100%配当となった事案は1件もありません

2014年02月18日