●2020年4月民法改正 保証に関する民法の規定の改正~個人の根保証契約~

 弁護士 久保 実穂子

1.保証契約とは
 お金を借りるとき、部屋を借りるとき、相手方から「保証人が必要です。」と言われた経験のある方がいらっしゃると思います。
 保証人とは、お金を借りた人、部屋を借りて家賃を払わなければならない人などの債務を負う人(法律上、「主債務者(しゅさいむしゃ)」といいます。)に代わって債務の支払義務を負う人をいいます。
 保証契約は、お金を貸した人や家賃を請求する大家さんといった「債権者」と「保証人」との間で締結されます。また、「連帯保証人」と「保証人」とでは、責任の重さが異なります。「連帯保証人」の場合、主債務者に財産があるかどうかに関係無く、債権者から「支払え」と請求された場合、支払う義務を負いますし、債権者が主債務者ではなく、先に連帯保証人に支払うよう求めてきても、「先に借りた人間に請求してください」ということ(法律上、「催告の抗弁(さいこくのこうべん)」といいます。)もできません。
 そのため、連帯保証人の責任は、主債務者の責任とほぼ同等と考えて差し支えありません。
2.保証契約の危険性(リスク)
 「絶対、迷惑は掛けないから」ですとか、「名前だけ貸して欲しい」と言われ、断れず保証人あるいは連帯保証人になってしまったというお話を耳にすることがあります。   しかし、上述しましたとおり、保証人の責任は大変重いものです。保証人や連帯保証人になるということは、自分が借りてもいない借金の返済義務を負うということですので、安易に保証人や連帯保証人にならないよう注意する必要があります。
3.2020年4月1日以降、部屋を借りる際などの上限額の定めがない保証契約は無効となります
 上述のとおり、保証契約は非常にリスクの高い契約となります。
 そのため、保証契約に関する民法の規定は、今まで保証人を守るために何度か改正されてきた経緯があります
  注: 例えば、2005年4月1日には、主債務に貸金(及び手形の割引を受けることによって負担する債務)が含まれる根保証契約については、今回の改正より更に厳しい内容で改正されています。
 そして、今回、新たに貸金等以外についても「上限額の定めのない個人の根保証契約は無効」という規定ができました。
 貸金以外の「上限額の定めのない個人の根保証契約」の身近な例としては、例えば、部屋を借りる際、家賃の支払いについて支払額の上限無しに保証するケース、家族が老人ホームや病院に入所する際、施設や病院から支払額の上限なしに支払保証させられるケースが挙げられ、『保証人になった時点で、最終的に幾らの支払いを保証することになるのかが分からない契約』といった内容の保証契約を指します。
 したがって、2020年4月1日以降は、個人(注:会社などの法人は含まれません)が保証人になる根保証契約は、例えば「50万円」というような確定的な金額で「極度額」=責任の限度額を定めなければ、保証契約は無効となります。
 また、保証契約は「書面(または電磁的記録)」が必要とされますので、「保証契約書」を作成する必要もあります。なお、個人が保証人になる根保証契約については、保証人が自己破産したとき、主債務者または保証人が亡くなったときは、その時点で極度額に満たない場合であっても、保証する金額(法律上、「元本(がんぽん)」といいます)は確定することにもなりました。

 

2020年01月15日