7.情報公開への結び付けを


 地域情報化政策で取り上げられてきたテーマは、行政事務の効率化に始まり、役所の窓口事務が遠隔地でも、いつでも利用できるようにする住民サービスの改善、図書館・スポーツ施設などの公共施設を利用しやすくするためのシステムづくり、医療や福祉への貢献、教育への支援、産業振興など多岐にわたる。
この稿では、インターネット時代を迎えて「情報革命」がようやく本格化したという立場に立って、インターネットの利用環境を整えるのに自治体がどういう役割を果たすべきかという面に力点を置きながら、いくつかの地域情報化の進め方を点検した。

 インターネットはすでに、行政の在り方を大きく変えつつある。中央省庁間を結ぶイントラネットである通称「霞が関WAN(広域情報通信網)」が稼動して1年あまり。「今では1日平均1万通以上のメールが飛び交い、『忙しい折衝相手をつかまえる苦労をしなくてすむ省庁間メールは、完全に定着した』と旗振り役の総務庁。99年5月に始まった中央省庁再編では、改正が必要となった1300あまりの法案をすべて電子文書化してネット上に公開。各省庁の担当者は、これまでファクスと電話でやり取りしていた書類を、電子化されたファイルで受け取ることになった。法案の折衝段階で霞が関の役所の内外を膨大な紙の束が飛び交う風景がすっかり姿を消した」と、日経ビジネス99年9月29日号は伝えている。また9月5日の日本経済新聞「春秋」は「すでに実施しているインターネットのホームページで国民の意見を聞くパブリックコメント制と合わせると、霞が関の情報革命は急ピッチで進んでいる」と指摘する。

 資材の調達や工事情報を公開する動きも始まっている。例えば埼玉県は「入札契約情報」というホームページで、入札結果や発注予定工事の一覧を公開している。入札結果には、入札対象額(設計額)1億円以上の入札について、随意契約か一般競争入札かなどの契約方法や入札予定価格、調査基準価格、契約者名、落札額などが表示されている。こうしたことが一般化すれば談合がしにくくなり、「3割は高い」などと言われることが多い公共工事のコスト削減につながることになる。

 またCATVなどによる議会の中継が各地で始まっている。視聴率は決して高いとはいえないが、地域の大問題が議会で取り上げられるような事態が起これば関心が高まるのは間違いない。現在でも、議員さんたちの緊張感と、住民の自治体行政への関心を高めるのに寄与しており、議事録がインターネットでも公開されるようになれば、より利用しやすくなる。

 国の情報公開法に先行して、多くの自治体では情報公開条例が作られ、情報公開制度が整備されてきている。だが、これがインターネットによる情報公開に結び付いている例はまだ少ない。
行政の透明性確保と、効率を上げるという両面から、役人の仕事は文書にして残し公開する、ということが求められるようになってきている。これらの文書はパソコン・ワープロで作られ、最初から電子化されているのだから、インターネット上で公開するのにさほどの手間はかからない。「電子政府」「電子県庁」「電子市役所」などが、言葉通り実現する日は近いが、そうなれば行政のあり方は大きく変わることになる。

 電子化文書のインターネット上での公開といっても、筆者自身がこの原稿をホームページに載せる技術をまだ習得していないように、「情報革命」はまだ始まったばかりである。自治体のホームページの内容は相当にばらつきがあり、利用のしやすさもまちまちだが、だれもが見やすいように利用環境を改善する努力とともに、真の意味での情報公開に結び付ける努力が求められる。


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