◆後れ取る広島


 まず地域情報化の前提になる自治体行政内部の情報化が、遅れている。自治省情報政策室が98年4月1日現在で実施した、地方公共団体の「行政情報化(OA化)の状況調査」によると、47都道府県のうち91.5%の43団体が庁内LANを利用している。だが、広島県はようやく99年度に庁内LANの敷設工事をした段階だ。特別区や指定都市を除く一般の市では658のうち58.7%に当たる386市が利用していたが、呉市も99年度で配線工事をして利用を始めたところである。LANは、コンピューターをネットワークの一環として利用するもので、今の時点では、組織がどれだけ情報を効率良く使っているかの指標になると思われるが、この点だけを見ても広島県や呉市の遅れが歴然としている。

 自治省が91年に「地域情報化計画」策定の重要性を指摘したことは先述したが、呉市にはまだそれもない。広島県は97年3月「高度情報化ビジョンひろしま高度情報化宣言」を策定した。だが、「県民の安心で豊かな生活の実現」「産業構造改革の実現」「県内外・国外との活発で多彩な情報交流の実現」「県民のための健全な情報環境の実現」という4つの到達目標、それに「基礎づくり」「豊かさ作り」「ふるさと情報化パイロット」「ヴァーチャル県庁構築」「行政情報化推進」に5分したリーディングプロジェクトとも、抽象的で、具体的な計画を伴っているのはわずかにすぎない。

 広島県はようやく99年度に、広島、呉、東広島の三市間を、光ファ イバーで結ぶ「情報トライアングル」の整備に乗り出した。例えば 現在、64Kbpsの通常の電話回線では三時間半かかるレントゲン写真十枚の送信が、622Mbpsの速さによって1.3秒で可 能になるという高速通信回線を、建設省の道路管理用光ファイバーなども利用しながら整備しようというものだ。現在、これを利用する実験参加者を募集中だが、実験期間が2000、2001の2年度に限られていることや、広島、東広島、呉の3市にそれぞれ1ヵ所ずつ設けられるアクセスポイントまでの通信は自己負担で行わねばならないことなどから、どんな実験が出てくるのか疑問視する向きもある。何より、実験参加には様々の条件がついており、「回線は開放するから、自由に実験してください」という岡山県との姿勢の差が大きい。


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