◆岐阜県


 その梶原知事が最初に力を入れたのが、ハイビジョンの導入だ。1989年には岐阜県美術館に世界初のハイビジョンギャラリーを設け、以降、県の拠点施設などへのハイビジョン導入、県民参加によるハイビジョン・ソフトづくり、ハイビジョンを中心にしたイベントの開催、ハイビジョン関連産業の育成・活用などに取り組んできた。

 その後、知事の造語による「情場(jo-jo)」づくりを目指すということになり、情報生産の拠点となる施設や情報交流施設を県下各地に作ってきた。
その代表が、大垣市のソフトピアジャパンだ。市郊外の広々とした田園地帯にひときわ目立つ13階建てのロケットのような建物と、付属の「大垣市情報工房」を建て、「高度情報基地ぎふ(情場)」の中核拠点」と位置づけた。最新設備を備えたマルチメディア研究開発室、ビデオ編集室、マルチメディア実習室や、県民への啓蒙普及を狙った体験型情報科学館「メディアプラザ」などを設け、周囲に造成した研究開発団地のスタッフらにも役立てる。

 この施設は、同じ大垣市に設立した国際情報科学芸術アカデミーとも連動する。こちらは大学院レベルの、県立の人材育成組織で、「優れた芸術表現やネットワーク技術を駆使してマルチメディア文化を世界に発信していけるメディアマスター」や、「マルチメディア制作、ネットワーク技術に関する知識・能力を持つメディアクリエーターやメディアエンジニア」を育成するのが目的だ。

 さらに各務原市には「VRテクノジャパン」も設けた。これは、バーチャル・リアリティ(VR)技術によって高度な生産体制の確立、製品の高付加価値化(超ハイテクオーダーメイドのモノづくり)という地域産業の高度化を目指し、VR技術の世界的な研究開発拠点にしようというものだ。 ここには県内の各試験研究機関を統括した岐阜県科学技術振興センターと、VR技術の技術支援と研究開発をする(株)VRテクノセンターという2つの産業支援機関が入った「テクノプラザ」が98年11月にオープン。周囲の分譲地への先端産業の誘致を進めている。

 岐阜県は、知事が先頭に立って情報化に力を入れてきただけに、都道府県レベルでは最先端の情報先進県といえる。例えば、98年9月段階での学校のインターネット接続は99%と、全国平均の18.7%とは比較にならない高さだ
http://www.monbu.go.jp/special/media/00000017/ken6.htm、また98年版通信白書によると、インターネットが接続できる小中学校、高等学校の割合は岐阜県が98.0%で、それ以外の都道府県は50%以下)。最近はICカードシステムの導入なども推進しており、県のホームページを見ると、総合的に取り組んでいることが分かる。情報化以外のテーマについても、ホームページの充実ぶりは他県に比べ際立っている。

 ただし気になるのは、いわゆる「ハコモノ」を中心に投資金額がふくらんでいることだ。ソフトピアジャパンには、ざっと350億円をかけたという。しかも国庫補助を受けると事業に制約を受け、事業計画も自主性が薄れて創造性のある人材の育成につながらないという理由で、自前で事業を進めている。「次の時代を考え、住民の幸せのために何が必要か、時代を先取りして布石していくのが行政マンの仕事」と安藤隆年・ソフトピア・ジャパン副理事長(98年2月の取材当時)は話した。普通の自治体には真似の出来ないほどの力の入れ方だが、それが成功なのか否か、結論が出るのには数年、あるいは十数年かかるのではなかろうか。


戻る