◇岡山情報ハイウエイの概要


 岡山情報ハイウエイは、1996年度から県が中心になって進めている事業で、「低料金・高速で24時間いつでも使えるインターネットの利用環境」を広く県民に提供するために、県が主体となって整備している「情報の高速道路」だという。

 具体的には、県庁と県内9ヵ所の地方振興局の間を高速・大容量(155〜622Mbps)の光ファイバーで結んだ通信網を整備し、これを無償で民間企業や研究機関、ケーブルテレビ事業者やインターネット接続業者(プロバイダー)などの通信事業者に開放する。
その結果、県内全域で市内料金、または月額200円を払えば市内料金扱いを受けられる隣接区域料金でインターネット利用が可能になった。これは一部の地域プロバイダーの値下げにつながり、CATV会社は月額6000円程度での高速・つなぎっぱなしのインターネット利用のサービス提供を始めた。

 情報ハイウエイは、98年4月には一応開通した。しかしこれは、県庁〜倉敷地方振興局間を建設省の道路管理用光ファイバーを借りて155Mbpsで結んだほかは、NTTの専用回線の借り上げで、回線速度も1.5Mbpsだった。その後、全部を155Mbps以上の自前の回線に切り替える工事を進めており、特に県庁〜津山地方振興局間は622Mbpsの高速になる。

 通信事業者が敷設するはずの回線を公共団体である県が敷設することの意義は何か。問題はないのだろうか。
まずコストの問題だが、県情報政策課によると、岡山情報ハイウエイの事業費は、96年度から2000年度までの5年間で34億円だという。このうち自設線の敷設経費は約17億円だが、1km当たりの敷設費は430万円ほどだという。道路の建設だと、1m造るのに100万円もかかるのが普通だから、これに比べればケタ違いに小さい投資規模だ。

 とは言っても、効用がないものなら投資は無駄だ。しかし、高速インターネット回線の利用環境を整えることの必要性は、今や自明のことになりつつある。問題は公共団体が敷設することの是非だが、これについて岡山県は「プロバイダーにとって、過疎地域まで自ら通信回線を延ばしてインターネットの接続点を設置することは、採算性の面から困難でしたが、県の回線を利用することで回線経費のコストが低減でき、すべての地方振興局所在地にインターネットへの接続点が設置されました」と説明している。(『そこが知りたい岡山情報ハイウエイ』岡山県企画振興部1999年10月)通信設備の提供は、電気通信事業法によって第一種電気通信事業者として郵政省の許可を受ける必要がある。県が通信回線を整備して、しかも無料で提供することは「民業圧迫」との批判を受ける可能性もある。また、技術の発達のスピードが極めて速い通信設備を、県が自前で持っても、すぐ陳腐化して無駄になるのではないか、という懸念もある。だが、県庁企画振興部情報政策課は「県が使う行政用のネットワークを一般にも使わせるものなので、陳腐化したとしても全く無駄だったということにはならないし、無料なので通信事業者ではない、という論理で郵政省にも理解してもらった」と説明する(岡本隆嗣課長代理)。

 岡山情報ハイウエイの特徴は、以上のような「高速ネットワークの整備」に加えて「高速ネットワークの活用」をもう一つの柱にしていることにもある。そもそも「『情報の高速道路づくり』を公共事業として進め、これを県民に開放することで、いち早く情報通信環境の向上を図るとともに、県民福祉の向上につながるさまざまなシステムの開発・導入を促進することにより、県民が優れた環境で医療、保健、福祉、教育等公共や民間の様々なサービスを受けることを可能とし、また、産業分野においても、この情報通信基盤を活用することにより地域産業の振興を図ろうとするもの」が目的だとしており、ハイウエイづくりは、県民サービスや産業振興に結び付かなければ意味がないことになる。このために岡山県が取った手法が様々の「活用モデル実験」だ。

 これは、情報ハイウエイをどう活用できるか、県民に参加を呼びかけて、地域コミュニティーや医療・福祉、教育・文化、産業、行政など幅広い分野での「アプリケーション」の開発をしたり、あるいは情報ハイウエイとCATVなどとの接続のための技術的実験をするものだ。96年度から3年間、毎年38から40の実験が行われた。大学病院や総合病院と地方の医院や診療所を結んでレントゲン写真やCT画像を送受信する実験で、プレス機に頭を挟まれて頭がい骨陥没骨折になった患者のデータがいち早く送られて緊急手術に役立ったとか、地域の回覧板を電子化してインターネットで利用する仕組みを開発するなど、多彩な実験が行われた。


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