照葉樹林文化圏の世界

                ー 東アジア文化の源流と日本文化との関連を探る ー


照葉樹林文化圏

ヒマラヤの中腹からアッサム、中国は雲南の山地を経て揚子江の南の地帯に至り、更に西日本に達する地帯には、カシ、シイ、クス、タブ、ツバキといった常緑広葉樹林が分布する。表面に光沢を放つ葉を持つ樹種が多いために照葉樹林と呼ばれる。この照葉樹林帯には数多くの共通する文化要素が認められる。中尾佐助はこの点に注目し、それらを共有することによって特徴づけられる特有の文化のまとまりを『照葉樹林文化』とよんだ。後に、佐々木高明、上山春平らがすすめた民族学、考古学的比較研究によって、この概念は一種の文化系統論において精緻化されていった。稲作起源の問題とともに、日本文化ルーツ論としても話題となった。

(『事典・東南アジア 風土・生態・環境』京都大学東南アジア研究センター編、弘文堂)

林行夫氏の解説より

 

 

このコーナーの

趣旨・目的

 

 照葉樹林文化圏を彩る各要素を個別に紹介していきます。(できれば、メコン圏と日本の両方に造詣の深い各分野の専門家のご協力を仰ぎたいと思っております)

 

 メコン圏に関心をお持ちの方にこの照葉樹林文化の世界を紹介するとともに、日本でのこれらの要素に従事あるいは関心をお持ちの方に、共通して広がるメコン圏にも関心を持っていただこうというもの。さらには、各要素間での各種各層での理解と交流が深まることになればと考えております。

メコン圏、日本を問わず、多面的に理解と交流を深めるために、技術、産業、自然、歴史、文化、社会などなど多方面からの関連情報やご意見を、お待ちいたしております。

 

今後のテーマ


 食・物資

▼漆

▼糯

▼コンニャク

▼竹

▼茶

▼酒

▼絹

  などなど

 

儀礼・風俗

 


今回のテーマ

    メコン圏に自生するカジノキ

     ご案内:小林良生(こばやし・よしなり) 

     タイ・カセサート大農業改良研チームリーダー

     慶応大工学部卒。東レ勤務を経て、1975年四国工業技術研究所に。

       1997年6月から、国際協力事業団(JICA)の長期派遣専門家及びチームリーダーとしてタイに渡る。

                留守宅は香川県高松市屋島西町。

 


 中尾左助らの提唱した照葉樹林文化圏のかなり深く根付いている技術の一つとしてカジノキの樹皮を用いた手漉き紙技術がある。

 

 カジノキ(Broussonetia papyrifera Vent.)はメコン川流域になる中国の雲南、広西地区、ラオス、ミャンマー、そしてタイ(北タイに限り)カンボジャ、ベトナムに広く自生している。


 日本では古くから和紙原料としてコウゾ(Broussonetia kazinoki Sieb.)が用いられてきたが、広い意味ではコウゾのなかにカジノキも含めている。学名を見ればシーボルトがカジノキと間違えたことが判るほどで、両者は植物学的にもよく類似している。英名では両者をPapermulberryといっている。


 日本の和紙業界が現在原料として使うコウゾは約8割がタイからの輸入ガジノキである(タイの文献側には1930年代にカジノキの白皮を輸出したという記録が残っている)そのタイも現在ではラオスからの輸入に仰ぐようになっている。照葉樹林文化圏が日本文化の源流的な役割を果たしているとすれば、和紙文化は未だに文化の故郷と深い関わりを持っているといえよう。

 

植栽実験のカジノキ

コウゾと違い真直ぐ上に伸びている

(北タイ・プレー県)

 


 尚、カジノキはポリネシア人が東南アジアから移住するとき、小さい船に乗せられて持参され、ポリネシアの樹皮布(タパ)の最も重要な原料である。                                   
 このようにカジノキは日本文化やポリネシア文化に極めて大きな貢献をしている植物であり、メコン圏の特徴をなす植物の一つといえる。                                                            

(注)カジノキもコウゾも、シーボルト(江戸後期に来日したドイツ人医師・植物学者1796-1866)が学名をつけているが、彼はコウゾの学名にkazinokiという名前を入れ、カジノキの学名にはパピルスの名前を取った。

 

 

tesuki-s03.JPG (48848 バイト) tesuki-s02.JPG (37161 バイト)

メコン圏では「簾干し」が

行われている

北タイ・ナーン県)    

 

写真提供:小林氏

紙漉き兼紙加工の家内事業

(北ラオス・ルアンパバン)

写真提供:小林氏

(北タイ・ナーン県)

写真:清水英明

(北タイ・ナーン県)

写真:清水英明

tesuki-s04.JPG (49146 バイト) tesuki-s05.JPG (33858 バイト) tesuki-s06.JPG (65667 バイト) tesuki-s01.JPG (53216 バイト)

 

 

(北タイ・ナーン県)

写真:清水英明

(北タイ・ナーン県)

写真:清水英明

(北タイ・ナーン県)

写真:清水英明

(北タイ・ナーン県)

写真:清水英明

 

今回のテーマに関心を持たれ、更に関連ホームページを調べてみたい方の為に

 今回のテーマに関連するホームページリンク 

        (注:招待者ではなく、事務局側の選定による)

 

  カジノキ

      ●青木繁伸氏(群馬大学社会情報学部教官)のホームページ

                         http://www.si.gunma-u.ac.jp/people/j/aoki/BotanicalGarden/HTMLs/kajinoki.html

                                http://www.si.gunma-u.ac.jp/people/j/aoki/BotanicalGarden/HTMLs/kouzo.html
                   コウゾ・カジノキを含む2万2千以上の植物を紹介した植物園。他にも多くのコーナー有り

      ●石川県(林業試験場)のホームページ

         http://www.pref.ishikawa.jp/ringyo/tree/kazinoki.htm

            いしかわ樹木図鑑として、石川県に自生するほぼ全ての樹木(430種)を紹介

         カジノキについては、日本での分布(中部以西の本州・四国・九州)、開花期(5月)、生育環境

                         (野生・栽培)などの記述だけでなく、葉などの特徴がよくわかる拡大画像が用意されている

 

  ◆手漉き和紙への招待

      ● 愛知県西加茂郡小原町のホームページ

          http://www.vill.obara.aichi.jp/tesukiwashi/index.html

        「手漉き和紙への招待」として、「和紙の産地一覧」「和紙の制作工程」「和紙の原料」「和紙の用途」

          「和紙の種類」など、小原町だけでなく、日本全国の和紙産地情報がまとめられている。

          和紙産地の多くは、コウゾを原料にしているが、佐賀県佐賀郡大和町の名尾紙のようにカジノキを

                            原料にしているところもある。(名尾紙は提灯紙・書道用紙などとして生産されている)

          同町の和紙展示館・和紙工芸館・和紙工芸作家工房案内もあり

             ●越前和紙の郷・福井県今立郡今立町の杉原吉直さんのホームページ

          http://www.washiya.com

          企業・個人・団体・関連別の和紙に関するホームページリンク集。和紙の質問箱も設置