支援する会会報<第16号> 2003年5月27日 |
〜JCO事故・健康被害訴訟 第3回法廷〜 いよいよ中性子線被曝・健康被害が争点に |
4月23日、JCO健康被害裁判の第3回法廷が開かれた。原告が過去に医療機関にかかった時のカルテ等を取り寄せることについて、前回法廷では被告側は事故の遙か以前のものまで取り寄せを要求していた。これに対して原告弁護団は、関連するものは事故以前も含めて取り寄せに同意するが、全く関係ないものまで取り寄せることには反対する準備書面を提出した。 また、被告側は法的な主張ばかりしてきたが、今回初めて健康被害に関係する主張を準備書面(2)として提出した。これによって法律論でなく、臨界事故と健康被害の論点にはいることを認めたことになる。いよいよ、臨界事故・中性子線被ばくと健康被害が争点になることになった。 |
被告側、前回主張を撤回 病院からのカルテ取り寄せは事故関連のもののみに |
裁判冒頭、裁判長が「被告は追加と撤回があるということで良いですね」との発言があった。被告弁護団は、原告の通院歴のカルテ取り寄せについて、事故と関係のない分の要求を撤回するということだった。前回に被告が事故の遙か以前のものまで要求していて、原告側はこれらの取り寄せには反対する準備書面を提出したが、被告の側から取り下げた格好になった。この点は、何が何でもイチャモンをつけたかった被告側の勇み足だったのだろう。 「それでは次回の日を決める前に何かありますか」との裁判長の言葉に、被告側の弁護士が挙手して発言。PTSDについての原告の主張が不十分だと主張した。しかし、その発言の中で、「PTSDの症状固定の時期は? 例えば交通事故で骨折した場合は・・・」などと骨折とPTSDを同列に扱うようなずいぶん乱暴な発言を行った。 |
次回から、臨界事故と健康被害の問題が争点に |
被告は準備書面(2)を提出したが、その中で原告の被曝線量を取り上げ、低線量だから健康被害が出るはずはないという主張をしてきた。これまで法律論ばかり主張してきたが、いよいよこれで健康被害の内容に入っていくことを認めたことになる。この点は大きな前進であった。 しかし内容はひどいもので、250ミリシーベルトあるいは100ミリシーベルト以下では健康被害が出るはずがないと頭から決めつけただけで、これまでの国などの主張そのままである。特に問題なのは中性子線の特殊な危険性を全く無視している点である。放射線事故でこれほど多くの住民が中性子線被曝を受けたことは歴史的に全くなく、危険性は未解明である。私たちが聞き取り調査をした理由もそこにある。この点は、例えば国のJCO事故・健康管理検討委員会を務めた佐々木正夫氏が、JCO周辺住民の染色体調査の結果から、「今回の被曝住民における高い染色体異常の調査結果はこのような高いRBE(生物効果比)として理解できる。」「中性子の生物学的効果に関する基準は見直すべき段階に来ている」として、これまで考えられてきたよりも5〜6倍、場合によっては7〜8倍も危険性が高いということを論文に書いている。いずれこのことも裁判の中でも問題にされ、JCOや国を擁護している研究者の言葉が逆にJCOに突きつけられていくだろう。 次回法廷は7月2日、16時30分からに決まった。 |
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