支援する会会報<第15号>   2003年3月11日

軽すぎるJCO臨界事故刑事裁判判決
国の責任を明らかにすべき!
JCOは住民の健康被害を補償せよ!

 東海村の核燃料加工会社「JCO」が、99年9月に起こした臨界事故の刑事責任を問う裁判の判決が出された。当時の事業所所長ら6人に対しては執行猶予付きの判決となり、法人としてのJCOに対しては、現社長が「寛大な処分に安堵」というように、たった100万円の罰金刑とされた。また、原子力施設の許認可権を持つ国や、JCOに無理な発注を行った旧動燃(核燃料サイクル機構)に対する責任は一切問われなかった。被告JCOは、「寛大な処分」のため控訴しないことを早々に決めた。JCOは、住民の健康被害には一言もふれなかった。事故の幕引きのために、粛々と法令違反を認めただけの茶番にすぎない。

あまりにも軽すぎる判決
 −−2人の労働者の死に誰も責任をとっていない

 国内初の臨界事故、労働者2人を被曝によって殺した事故、住宅地のど真ん中で起きた事故、何の安全防御もされていない事業所で起こった事故、非常に危険な中性子線を大量に放出した事故、無防備な住民多数を被曝させた事故。この事故に対する判決は、6人に対しては業務上過失致死や原子炉等規制法違反、労働安全衛生法違反などの罪が問われ、執行猶予付きの刑となった。 法人としてのJCOには100万円の罰金のみ。これでは死した労働者は浮かばれないのではないか。原子力や放射線の危険性など何も教育されず、突然致死的な放射線を浴び、自らが放射線を発する「物体」と化し、染色体がズタズタに破壊され、どのような医療を施しても死を待つしかなかった大内さんと篠原さん。彼らの無念はいかほどのものか。会社と会社の幹部、上司は、わずかの罰金と執行猶予とは…。これではあまりにあまりすぎるのではないか。

誰も納得できない−国の責任を問わない判決


 裁判官は、多くの住民と労働者を中性子線被曝させた世界でも例のない事故に対する国の責任については一切触れなかった。「国の監督責任」に対しては、企業倫理の欠如を対置し、国を擁護した。しかし、住宅地の中に高濃度のウランを扱う施設を許可したのは国ではないのか。JCOが勝手に作ったとでもいうのか。また、証人出廷したJCO元課長が、「旧科技庁の安全審査官は、製造工程の安全性をよく理解していなかった」と指摘、一方、元安全審査官は「JCOが操業できるというので、それを信じた」と証言し、国のいい加減なチェック体制(チェック体制とはいえない!)が明らかにされている。作業上の安全対策が守られているかどうかを確かめる科技庁の調査も7年間、なされていなかった。これほどでたらめな監督が世間で通用するのか?

「量刑が軽すぎる」−地元住民は、不満と憤り

 この裁判でJCOは、住民への健康被害について一切問題にせず、謝罪もしなかった。誰も住民を被曝させた責任をとらないまま、史上最悪の事故を幕引きしようとしている。

〔判決に対する住民の声〕
 ・「人が死んでいるのに軽すぎる」
 ・「厳しく罰してほしかった。裏マニュアルがあったこと自体、許せない」(事故当時  おなかの中に子供がいた主婦〈27歳〉)
 ・「自分も、被曝した住民もいまだに健康への不安を抱えている。執行猶予のついた  判決は軽いと思う」(JCO近くで仕事中に被曝した男性)

 住民の皆さんの健康や将来に対する不安は、この判決によって何ら和らげられるものではない。被告に対する「量刑が軽すぎる」というのは、被曝という決して消し去ることの出来ない事実、更には次の世代までその影響を与えかねない不安からすれば当然の言い分である。
 「臨界事故被害者の会」の大泉代表世話人は、「全員実刑と思っていたのに、納得できない」と述べ、不満を露わにした。更に「これで終わったわけじゃない。被曝した住民の闘いはこれからも続く」と決意を語られている。東海村の相沢一正村議は、住民に対する健康被害が問題にならなかった点、国などに対する事故の遠因をつくった意識の薄さなどを挙げ、「民事訴訟が続いている。これが決着しない限り終わらない」と強調された。私たち「支援する会」は、健康被害の賠償を求め、民事訴訟に立ち上がっている大泉夫妻を応援し、JCOと親会社の住友金属鉱山、更には国の責任を問い続けていきたい。
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