支援する会会報<第13号>   2002年11月20日

臨界事故健康被害訴訟 第一回口頭弁論行われる

大泉昭一さんの訴え
ーなぜJCOは被害者の事を考えられないのか!
 
 
大泉夫妻が、JCOと親会社の住友金属鉱山を相手に、健康被害の慰謝料など約5760万円の損害賠償を求めた裁判の第一回口頭弁論が、13日水戸地裁(仙波英躬裁判長)で開かれた。臨界事故被害住民が、健康被害の補償を求めた初の裁判であり、支援者を中心に多くの傍聴者が詰めかけた。今回の裁判では、原告側の訴状陳述と補充説明が行われた。
 一方被告側は全面的に争う姿勢を明確にした。JCOは健康被害について、事故との因果関係を一切否認し、住友金属鉱山は、直接の原子力事業者ではない同社に賠償の義務はないとした。
 私たちは、被告らの損害賠償請求の棄却要求を批判し、臨界事故健康被害訴訟勝利のために、支援を行っていこう。

健康被害は事故によって起きた
  まず、大泉昭一さんによる陳述が行われた。大泉さんは今回の臨界事故を、「中性子線を大量に放出し、2名の作業員を死亡させ、周辺住民の被曝をもたらした国内最大の原子力事故」と特徴付け、自分たち夫婦は、「120b離れた工場で約6時間の間、何も知らされないまま、大量の放射線を受け続けた」と事故当日の状況から話された。妻恵子さんは、事故直後から激しい下痢が続き、体力が低下すると共に、寝たきりの状態に陥った。事故直後の検査では白血球数やリンパ球数が異常に増えた。そして事故後1ヶ月たった頃から胃痛が激しくなり、胃潰瘍の診断を受けた。今年6月には、事故による心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断された。現在でもJCOの建物を見ると気分が悪くなり、近づくことさえできない状態が続いている。大泉さんは、会社の重要な働き手であった妻が働けなくなったことに加え、自身も原因不明の皮膚病の悪化、糖尿病の悪化、白内障の急激な発症などによって入退院を繰り返し、廃業を余儀なくされたと訴えた。
JCOは、なぜ健康被害への補償は認めないのか
 JCOは、風評被害など企業損害には147億円の補償を行ったが、健康被害への補償に対しては一切拒否してきた。「事故と健康被害の因果関係を証明する診断書を持ってこい」と。しかし今度は、妻が苦しんでいる症状と事故との因果関係を認めた医師によるPTSDの診断書を提出すると、前言をひるがえし認めなかった。
 「私はJCOに人間としてはっきりと言いたい」と、ひときわ力強く訴えられた。「モノには147億円を出せるのに、ヒトにはなぜ補償できないのか。人間として健康を守り、健康を保障することが先決ではないのか。にもかかわらず医師の診断書のあるPTSDをも否定するとはどうゆう事か。人道的立場に立つならば、健康被害に対する補償をすべきだ」と。
国の「健康被害はでない」は疑問!
 大泉さんは、国の打ち出した「健康被害なし」の結論にも疑問を投げかけた。「『50ミリ シーベルト、或いは200ミリ シーベルト以上の被曝でなければ問題ない』というのは、国が政策的に決めたもの」。続いて、国の被曝線量通知で大泉工業で当日同じように仕事をしていた従業員の間で、0.5ミリ シーベルトの差が出た事について旧科技庁に問い合わせると、「0.5ミリ シーベルトの差の原因が分かったところで、何のメリットがあるのか」と言われたことを批判した。そして、「たとえ0.1ミリ シーベルトでも、住民は事故によっていわれのない被曝を受けたのだから、その責任を取るべきだ」と主張した。
 最後に、事故当日JCOは、社員をいち早く避難させたのに、住民を放置した事を取り上げ、「JCOはなぜ被害者の事を考えられないのか!」とその非人道性を批判した
原子力損害賠償法を盾に責任を認めないJCOと住友金属鉱山
 被告のJCOは健康被害と臨界事故との因果関係を否定した。さらにJCOおよび住友金属鉱山は、原告が原子力損害賠償法の不十分性を訴状で批判し、主位的には民法(不法行為による損害の賠償)で訴えているにもかかわらず、やはり原子力損害賠償法を持ち出し、法的に責任がないと主張した。原告側弁護団の海渡、伊東両弁護士は既に訴状で述べているにもかかわらず持ち出したことを「子供じみた反論だ」と批判した。
 次回裁判は来年の2月12日に決まった


法廷後記者会見する大泉さんと原告弁護団
前(12号)へ    次(14号)へ
    
会報TOP   支援する会Home