aoilogo2019年7月藍生主宰句
螢籠
黒田杏子


  五月十五日 九十七歳 嵯峨野僧伽
青嵐瀬戸内寂聴青嵐
財は成さねど句友あり新茶また
ぬか漬の胡瓜一本尉と姥
あをき月光青梅雨の高野山
梅雨の月数珠屋豆腐屋扉を立てゝ
無量光院しんとまぶしむ梅雨の月
雑草園金のまぶたのひきがへる
端座して涼し雑草園主人
青草と四万十川の水螢籠
ほたる籠子供の居ない家の軒
風鈴を外して吊りぬほたる籠
四万十川の河口小体な螢舟
歩き遍路の老女には螢籠
縁側に父の編みたる螢籠
いもうとの横顔大人びて螢
ほうたるの噴井のほとりよりきたり
卓袱台をたためばほたるまたほたる
往診の父馬に乗る螢の夜
青螢ほうと那須野の青葉木菟
青蚊帳に兄の放ちし青螢


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