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黒田杏子
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五月十五日 九十七歳 嵯峨野僧伽 青嵐瀬戸内寂聴青嵐 財は成さねど句友あり新茶また ぬか漬の胡瓜一本尉と姥 あをき月光青梅雨の高野山 梅雨の月数珠屋豆腐屋扉を立てゝ 無量光院しんとまぶしむ梅雨の月 雑草園金のまぶたのひきがへる 端座して涼し雑草園主人 青草と四万十川の水螢籠 ほたる籠子供の居ない家の軒 風鈴を外して吊りぬほたる籠 四万十川の河口小体な螢舟 歩き遍路の老女には螢籠 縁側に父の編みたる螢籠 いもうとの横顔大人びて螢 ほうたるの噴井のほとりよりきたり 卓袱台をたためばほたるまたほたる 往診の父馬に乗る螢の夜 青螢ほうと那須野の青葉木菟 青蚊帳に兄の放ちし青螢 |