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黒田杏子
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三十のをんな怖れぬ花の闇 花巡るわれにひとりの母者びと 花冷の月花冷の星けふも 日光月光花巡れ花浴びよ 花満ちてこの世の情身に浴びて 句を捨てゝ句を捨てゝ花巡りきし 花冷の手紡ぎ手織藍刺子 花下草上墨いろ篠田桃紅の みづうみや観音の闇花の闇 さすらうて櫻の國に存へて 亡き人と語るべく花巡りきし さまようて桜の國に存へて 窖に老女一人飛花落花 曼陀羅山寂庵といふ花の闇 弛まずに稼がずに花巡りきし 引鶴の月よぎりゆく花の國 櫻花巡りて人に遭ふ墓に遭ふ 子を持たぬ櫻花巡礼者速歩 満開の花巡りきしわが一生 櫻花巡りて句を賜ふ歓喜なほ |