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黒田杏子
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賀状千通署名して投函す ほしいもの無くてふたりの小晦日 深大寺さま年越のそば賜ふ ナサニエル・ローゼンバッハ去年今年 莟解きゆく鉢牡丹除夜の鐘 屠蘇風呂に身を沈めたる日の出かな 闘志闘魂元朝の日のひかり 寂聴撰酒「白道」を年酒とす 牡丹二花茶の間にひらくお元日 屠蘇の香や七階の日に棲み慣れて ことしから兜太先生賀状無し おなつかし石垣りんさん初夢 正倉院御物 初夢に螺鈿紫檀の五弦琵琶 読みて書く詠みて推敲二日の日 あらたまの月の光と風の音 墨痕淋漓長寿者の賀状なり 生きてゐる人に手紙を書く三日 選句してよみがへりゆく四日かな 寒に入る葉書一束投函し 式根島よりの 明日葉と蓬七日粥まみどり |