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黒田杏子
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母のこゑして昼顔の庭となり 手紙束ねて八十の夏終る 豪快な祖母爽快な母われに 昨夜書きし葉書投函して涼し 稲光よき師よき友よき手紙 長命の紺朝顔の母者人 露草の露をとどむる日の出前 句集『にれかめる』に 牛飼の署名落款雲の峰 ナサニエル・ローゼンバッハ終戦日 森閑と嵯峨野僧伽の蝉しぐれ 寂庵に寂聴法話昼の蟲 ふと覚めて句帳に記す杳き蝉 黒潮の土佐清水より今年米 鶏頭の鶏頭として屹立す 孤立して連帯鶏頭花一列 兜太大人の 秋雨を聴く留守電のこゑを聴く 銀河奔流白曼殊沙華皆野 野に山に秋の遍路の鈴の音 いちじくのポルトガル産ディグリード いちじくのフランス産はネグローネ |