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黒田杏子
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八十歳十一月の鉦叩 寒月皓然本郷徘徊二人 富有柿会津身不知次郎柿 ひひらぎの花母の句を憶ひ出す 関東の出番の葱に刃を入るる 九條葱美し関東の葱甘し 関東の待てば出番の葱甘し 寂聴先生 十一月十四日 法臘四十五返り花あまた そば掻きや若き日の父母讃へ合ひ 神無月ひと日ひと日を歓びて 狐火の列那須野ケ原の記憶 乾つ風熄む狐火の粛粛と 狐火の紅蓮たちまち大紅蓮 はるかより来る風音と狐火と 狐火や疎開難民児童群 狐火の列立ち止まる夢の奥 狐火や灯火管制解かれねど 狐火の朱と紅と眼に仕舞ふ 狐火の小川芋銭の筆なりけり 狐火の紅蓮終生まなうらに |