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黒田杏子
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春星座現役往生大往生 春眠の呼気安らかに途絶へしと 弔辞三本受けて立つ春の雷 悼詞三篇脱稿す春星座 春北斗寝釈迦の相の大詩人 冬眠の蝮も起きて来て侍り 日本銀行本店金庫番にて定年退職 春暁の夢くらがりに大金庫 鍵がかからぬ春宵の金庫番 春暁の夢なつかしき金庫番 梅咲いて散つて柩を覆ひけり 極上の一生を仕舞ふ春の雷 蓬摘む天上秩父囃子なる 立禅完了正座して百千鳥 瞑目の大人の傍に花を待つ 兜太大人存さねどみな花を待つ アニミスト詩人と花待ちたかりしに 花に問へ発たれし人と花に問へ 花を待ち人見送りて花に問へ 花に問へ天なる人の魂に問へ 荒凡夫存在者花降りやまず |