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黒田杏子
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稲妻をしづかに待ちてよろこびて 山姥の蒼稲妻に生き返り 天平の少年阿修羅稲光 語り尽きざる老兵と兜虫 本郷に聴く大川の遠花火 身のどこも痛まぬわれに遠花火 けさ秋の星をつつめる雲の群 ひぐらしやインクをブルーブラックに 広島忌長崎忌われ八十歳 八月十日欲しいもの恐いもの無し 八十の身体髪膚終戦日 ありがたき友達ばかり雲の峰 選句して選句して夏送りけり 句帳一冊枕辺に法師蝉 受話器とる嵯峨野僧伽の法師蝉 弟と那須野ケ原の野分聴き 樺さん八十歳の今年米 あさがほの縹に星の香の残り 秋声を聴く十二基の句を撰み 夕星や枝豆ごはん菊膾 |