aoilogo2017年10月藍生主宰句
秋声を聴く
黒田杏子

稲妻をしづかに待ちてよろこびて
山姥の蒼稲妻に生き返り
天平の少年阿修羅稲光
語り尽きざる老兵と兜虫
本郷に聴く大川の遠花火
身のどこも痛まぬわれに遠花火
けさ秋の星をつつめる雲の群
ひぐらしやインクをブルーブラックに
広島忌長崎忌われ八十歳
八月十日欲しいもの恐いもの無し
八十の身体髪膚終戦日
ありがたき友達ばかり雲の峰
選句して選句して夏送りけり
句帳一冊枕辺に法師蝉
受話器とる嵯峨野僧伽の法師蝉
弟と那須野ケ原の野分聴き
樺さん八十歳の今年米
あさがほの縹に星の香の残り
秋声を聴く十二基の句を撰み
夕星や枝豆ごはん菊膾


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