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黒田杏子
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九月十八日 アビゲールさんお父上急逝 月光を踏み花野踏み妻の許 九月二十三日 九十八歳 熊谷行 兜太さん藍の作務衣の曼殊沙華 邯鄲のゆふべあかとき鉦叩 月光の白曼殊沙華剪れば鳴り かって浜崎浜子先生と小体な屋形舟で 三句 四万十川や月光のいまなみなみと 四万十川の月真澄なり漕ぎ出でな 四万十川の河口にとどめ月見舟 十月四日「藍生」深大寺観月句会 十句 月を待つ天平のこのみほとけと 月の香のほのと天平佛拝す 名月の真ひかり雁の棹しばし 月光とみほとけとこの世のちの世 名月のその真下なり深大寺 月光無盡蔵瞑りて ![]() 月真澄月今宵客殿の句座 月に問へ生きて真澄の月に問へ 月光のさざなみを舞ふ雲の群 音たててあふるる真水月の寺 寂庵にて 三句 月渡る曼陀羅山ゆ小倉山 徒跣なる遊行者等月に雁 嵯峨野僧伽寂かに後の月祀り |