aoilogo2010年8月藍生主宰句
虹仰ぐ
黒田杏子

  「みなづき賞」六月二十五日 山の上ホテル三句
語り継ぐ甲斐のひとびと梅雨の月
受賞者に大枝のこのさくらんぼ
梅雨を聴く甲斐絹の傘を拡げては
  「沼杏」牧水記念館和室
白南風や牧水の歌掛けながし
練切の枇杷も二十五雪解富士
ひるがほのしぼまぬうちの一仕事
ほたる飛びはじめましたと山廬より
昼寝より覚めおとうとといもうとと
  近藤道生先生長逝の報に
こゑの名残りを天心に梅雨の月
兄の齢越す草刈つて草引いて
  西条市石鎚開発
野ざらしの伊予の青石送り梅雨
子別れの母子なき妻虹仰ぐ
ほとけさまほほゑむ西瓜切りわけよ
往還に出て走り出す終戦日
剛毅なるをんなともだち露の世に


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