aoilogo2009年12月藍生主宰句
枯 野
黒田杏子

 小鳥来る疲れて立てぬ者の窓
 高野より賜る念珠天の川
 ゆっくりと昼を睡れと尉鶸鶲
 ともかくも刈田の遊行柳まで
 紅葉して殺生石に人の列
 くろばねや簗に錆朱の鮎つぎつぎ
 鮎落ちてくろばねのこの紅葉冷
 白鳥の来る沼ひとつ那須野にも
 むつちりと火の香塩の香子持鮎
 菊摘んで暮れて灯す一軒家
 鮎落ちて往還をゆく人もなし
 ふくろふや老女しづかに起き上り
 ぐつすりと睡れ枯野のこの端に
 いちじくを煮て棗煮て灯を消して
 父二十兄五年祭富有柿
 


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