aoilogo2009年10月藍生主宰句
秋刀魚焼く
黒田杏子

 句を詠みし母の文机秋ぼたる
 野分待つこころいよいよ山姥に
 七十の夏百日を病まず越し
   熊倉伸宏さんの新著
 フロイト空海秋の声無尽蔵
 日の出待つ露草のこの一輪と
 鉦叩そこに鉦打つ朝ごはん
 被爆者の句をととのふる晩夏かな
 被爆俳人封書を給ふ白露かな
 月光の沁みゆく踊櫓かな
 山國やいくたびかかぐ盆花火
 秋の蚊も寄つちや来ませんいつからか
 ふたり棲む野分の月の明るさに
 月の芒を高く挿す亡き人に
 生涯のふたり暮らしの秋刀魚焼く
 秋刀魚焼く阿波のすだちのありてまた
 


戻る