aoilogo2009年3月藍生主宰句
二日灸 
黒田杏子

 狐火の山裾をゆく列に父
 狐火や父の往診黒鞄
 極月や海の花火にうかぶかほ
 雪女それはわたしと振向ける
 大年や金子医院の母屋の灯
 古妻のやうにあかがり薬指
 孤独地獄手書四文字年賀状
 越前の水仙の香に読始む
 佐渡の虹まとふ寒鰤給はりぬ
 一鉢の雪割草を枕辺に
 起きて読み書きて睡りぬ寒の内
 松山の星空に逢ふ梅に逢ふ
 立春のけさしぼりたる加賀の酒
 七十の二日灸といふものを
 雛市を抜け柳橋梅花亭
 
 


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