aoilogo2006年6月藍生主宰句
穀雨
黒田杏子

 底の知れざるこの年の花の冷
  朝寝して六十七の夢のいろ
  選句中断たけのこのもう届き
    吉野川畔で摘みしという
 
土筆グラッセ春愁のその色に
  句を敲く土筆グラッセ濃むらさき
    青岸渡寺尊勝院
 
おぼろよのなちのまくらにひびくたきつせ
  花冷や十日の月を那智高野
  生くる病む老ゆるこの世を発つ朧
    「ラメール俳壇」以来の句友新井靖子さん
 
春愁の翼拡がりきって発つ
    高野山旧正御影供
 
お逮夜の春燈開扉孔雀堂
  山上御影供かがやかに星冷えまさり
  亀鳴くと米寿少年兜太かな
    新生「新三郎帆布」
 
かばん屋のあるじと語る穀雨かな
  残花しぐるる寂庵に句を選み
  たそがれのうぐひすこゑをそろへくる


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