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黒田杏子
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底の知れざるこの年の花の冷 朝寝して六十七の夢のいろ 選句中断たけのこのもう届き 吉野川畔で摘みしという 土筆グラッセ春愁のその色に 句を敲く土筆グラッセ濃むらさき 青岸渡寺尊勝院 おぼろよのなちのまくらにひびくたきつせ 花冷や十日の月を那智高野 生くる病む老ゆるこの世を発つ朧 「ラメール俳壇」以来の句友新井靖子さん 春愁の翼拡がりきって発つ 高野山旧正御影供 お逮夜の春燈開扉孔雀堂 山上御影供かがやかに星冷えまさり 亀鳴くと米寿少年兜太かな 新生「新三郎帆布」 かばん屋のあるじと語る穀雨かな 残花しぐるる寂庵に句を選み たそがれのうぐひすこゑをそろへくる |