aoilogo2005年6月藍生主宰句
山櫻
黒田杏子

四月十五日(金)、百花繚乱の嵯峨野僧伽。あんず句会開会のとき、藤田湘子先生ご自宅にて急逝との報、日経新聞俳壇担当記者よりとどく。献じて三句

終の栖を花に発つこころざし
蝶の昼句帖の余白花の昼
春雷ののちかつと照る机かな
花を待つ雪国びとに書く便り
働いて睡りてふたり花を待つ
哭きがほのひとつやふたつ花を待つ
ほんたうの不幸を知らず花を待つ
花を待つ死者の購めし歎異抄
朝櫻三光鳥のこゑのこり
   今井豊さん手術成功。西東三鬼賞も受賞
生還の一人書写山の朝櫻
花に紛れ闇に紛れ我に逢ふ
巡り辿れる花冷の夜の鈴
ゆっくりと渡りきるまで花の闇
一介の老女一塊の山櫻
花に逢ふ眼のふたつありて老ゆ


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