aoilogo2005年1月藍生主宰句
返り花
黒田杏子

   新田久子さん
 ひやうと発つ冬青空の裏側に
 庭枯るる旅鞄など枕上に
 日なたぼこして眼を瞑りそのままに
 冬麗や眼ざまし時計死者に鳴り
 十二月一日大往生の柩
 返り咲く桜一枝を柩にも
 残りたる者箸置もみやこどり
   無量光院
 けさひらく高野山上返り花
 雪を待つ高野の木々と暁を待つ
 白湯汲んでわれも旅人冬に入る
   箱根大根畑吟行
 富士に響ける十一月の鉦叩
 まぶしさのきのふけふあす大根穴
   坂東吟行第18回 天開山大谷寺
 照る翳る石山柞葛もみぢ
 その声を聴く柞山観世音
 柞炎え舞へ石切夫石負女


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