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第十三回 一月・新潟の藍生だより

写真と文:山田 哲
Yamada Tetsu:94年5月藍生入会。新潟市在住。現在、藍生にいがた事務局を担当しています。
写真・文・句は山田のほか「藍生にいがた」会員の鈴木 靖さんと丸山智慧子さんのご協力によります。


元旦の風景
冬の新潟といえば北西の季節風が吹き募り、雪も容赦なく降る、寒々しい街とお思いの方が多いと思いますが、県都新潟市は昨年暮から積雪のあった日が一日もありません。このところの暖冬を嬉しいと言うのか淋しいと言うのか。複雑な思いです。
とはいえやはり冬。12日から寒波がやって来て、市内の積雪も3〜4cmになりました。

信濃川が海に注ぐ二つ手前の万代橋を紹介します。
新潟市は柳と水の都といわれて栄えてきました。
水の都に相応しい「万代橋」は1929年生れの市民誇りの名橋です。長さ306.8mの六つのアーチを持つ、御影石の化粧張りが美しい橋。写真のようにアーチの頂点の厚さが薄いのも美しさの秘密になっています。昭和39年の新潟地震にもびくともしませんでした。
 

生れ日や初日あまねき万代橋  哲

 

万代橋

高浜虚子句碑
この万代橋は三代目で、初代は1886年に架けられた782mの日本一長い木の橋でしたが、火災で焼失してしまいました。二代目の橋を大正13年9月新潟市を訪れた高浜虚子が

千二百七十歩なり露の橋  虚子

と詠んでいます。

防波堤 万代橋を東から西に渡って程ないところが日本海。5〜60年前の海岸線は砂丘が幾重にも列なって沖に延びていましたが、現在は市街地を沈没から防ぐための防波堤に守られる荒涼とした汀になってしまいました。


冬怒濤防波堤ごと消しゆけり  哲
坂口安吾句碑

日本海を見下ろす神社の丘に新潟市出身の無頼派の作家、坂口安吾の石碑が尾崎士郎等の手によって建立されました。日本海に真向って立つ碑文には、安吾が亡くなる(1955年50歳)一か月前の色紙の言葉「ふるさとは語ることなし」が刻まれています。

初凪や松籟もなく安吾の碑  哲

 

冬の風物 白鳥
新潟の冬の風物といえば川や湖沼に飛来する白鳥抜きには語れません。

白鳥1
白鳥の飛来地として有名な瓢湖(水原町)には、シベリアから約5千羽の白鳥が、冬の間、この湖で過ごし3月下旬にとびたっていきます。飛来してくる白鳥のほとんどは、嘴の黒い部分が多いコハクチョウといわれています。
また白鳥のほかにも約3〜5万羽の鴨が集まる水鳥の楽園になっています。



白鳥群一番星に照らされて  靖 



その他にも福島潟、鳥屋野潟、ラムサール条約に指定された湿地=佐潟,それぞれに数千羽単位で白鳥が群れています。白鳥2
白鳥は朝、群ごとに湖沼を翔って、近在の落穂の多い田に舞い降り、日がな一日餌をついばんでいます。没日の前後に田圃から、元気に啼き交わしながら、狭い湖沼に思い思いの方角から帰ってくる様は圧巻です。

      白鳥の茜の翼帰り道  哲


昼の田の白鳥は、幼鳥が父母の白鳥に挟まれた家族(5〜6羽)が4〜50羽の群れになって落穂拾いをしています。

白鳥3

 

  近づけど白鳥いまも遠きまま  哲

白鳥4

白鳥5 親白鳥は黄色と黒が美しい嘴ですが、当歳の幼鳥のそれはグレーと黒、翼の色も親鳥は真っ白ですが、白とグレーの斑な羽色です。幼いとはいえ生命力は抜群です。

*写真はクリックすると拡大表示されます。
文中に撮影者名のない写真、文:(c)山田  哲
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