aoilogo2004年8月藍生主宰句
蟻地獄
黒田杏子

白神や月のひかりに朴の花
北限の新茶越路にいただきぬ
嵯峨祭巡幸略図青嵐
麻を着て妣のごとくに老いゆかな
富士真紅暁蜩のはたと熄み
鬼灯の花苔の花昼の酒
青梅雨の髪剪ってなほ旅ごころ
羅の大往生の母者びと
すずしさの月の高野に句碑の数
青嵐ひとはことばを遺しけり
翡翠ののち黒蝶のおびただし
蟻地獄旅人としてすれちがふ
紅粉花を摘む川霧の暁けぬ間に
ふたり棲むつめたき酒の盃挙げて
ゆるやかにさみだれ萩をくくりけり


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