藍生8月 選評と鑑賞 黒田杏子 |
御柱立つ風に響り星に響り (石川県)橋本 薫 |
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御柱の句は多い。とくにことしはテレビなどでもしばしば報道されたし、多くの観光客を集めたようである。この句、いかにもこの作者らしいとらえ方だと思った。風に響り星に響りと置いたことで、垂直に天空に向かって立つ御柱の颯颯たる存在感と、宇宙性そのものが詠い上げられている。 |
五月空やがて屋島の暮れかかり (香川県)熊谷 一彦
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信濃の善光寺門前に暮らしていたこの人はいま、四国高松の住民となった。転勤のたびに、新鮮な出合いに恵まれ、佳吟を得ている。空も蒼く、海も蒼い。やがて屋島に暮れかかり、ここに旅人としての作者の情感が余すところなく表出されていると思う。 |
すれちがふ蛍火ふつと濃き光
(神奈川県)名取 里美
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蛍はこの作者にとって、第一句集「蛍の木」以来のモチーフである。この鮮烈さはどうだろう。蛍火の生命感を素朴にとらえて、こころにのこる句となった。 |
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9月へ
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