aoilogo2002年9月 藍生 主宰句
立秋の富士
黒田杏子


十薬剪りて挿す樺美智子の忌
ひとにふるさと河童忌の河の音
起きて書く書きて睡れる土用かな
射干やいよいよ縮む媼の背
水のんで大暑の遅筆かなしまず
茫々と大暑の鴉よび合へる
四十といふ涼しさを火にくべて
発たれしか紅粉花莟みなひらき
水音の郡上八幡夕かなかな
三味を彈きつゝ門を出る盆の月
寂寥の暁蜩の郡上かな
不知火の火の霊の舞ふことごとく
陰暦八月八朔の舟霊火
不知火や海をさまよふ火の滴
哭くなかれ立秋の富士まむらさき