1969年、日本モータースポーツ界はもとより、世界中のモータースポーツファンに衝撃的なニュースが飛び込んできた。
それは、宇宙時代の革命的なCAN-AMマシン “ AVS SHADOW ”の発表であった。それは、日本でも有名な “ドン・ニコルズ”率いるAVS (アドバンス・ビークル・システムズ)が開発したまったく新しい発想のマシンであった。
 一番の特徴は、そのボディデザインにある。なんと前面投影面積が常勝マクラーレンM8の半分で、時速400Km/hを実現するという。その他、極小タイヤ専用のサスペンションやリアエンドに設置されたエアーブレーキなど新機構満載である。
 シャドウは、この年のCAN-AMシリーズに参加すべく、すでにパーネリー・ジョーンズ、マリオ・アンドレッティ、ジャッキー・イクス、ロイド・ルビーのドライブを予定しているという。また、スポンサーであるファイアストンタイヤがシャドウ専用のスペシャルタイヤを開発中であると発表されていた。

 しかし、AVSシャドウの1969年CAN-AMシリーズへの参加は実現することはなかった。
テスト走行により判明した問題点の改善が思ったように進まなかったことが原因だったようだ。
 1970年。ようやくレースが出来る状態まで仕上がったAVSシャドウの姿に、デビュー当時の面影はほとんどなくなっていた。
ボディの低さとタイヤの大きさは、同じであったが、70年より実施されたFIA規約の改定も重なったことと、クーリングの問題とハイウイングの必要性などにより、下記の写真ようなスタイルに変更されていたのだ。
また、ドライバーも当初の有名有力ドライバーの獲得はならず、当時まだ実力を発揮していなかった“ジョージ・フォルマー”と旅烏“ビック・エルフォード”が担当することとなった。
しかしながら、戦績はリタイヤが続き、レース間の移動中の交通事故なども重なり、70年シーズン半ばで無念の撤退となる。
 それ以降のシャドウの戦績は、デザイン上の発想転換と共に向上し、CAN-AM最後のシーズンではチャンピオンを獲得するまでに成長するのであるが、やはりデビュー当時の革新的なイメージを忘れる事が出来ない。


Leftside: G.Follmer with Shadow in 1970 CanAm Round 1.
Rightside: V.Elford drove SHADOW in Mid-Ohio.
Special thanks : AUTO SPORT & AUTO TECHNIC.

 そんなデビュー当時のAVSシャドウMKIが現在もグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードなどのクラシックイベントに参加していることは、以前のレポートでも紹介済みであるが、今回、現存するAVSシャドウMKIを徹底的に調べ上げ、1/12スケールモデルカーとして作り上げた1人のモデラーを紹介したいと思う。
彼の名は、Mr.Klaus Tonn。ドイツのフランクフルトに近い小さな町Morfelden-Walldorfに住まいを構えるドイツ人である。
Mr.Klaus Tonnは、現存するAVSシャドウMKIを所有するチームのマネージャーも勤めている。
また、氏は、スロット・レーシングにも精通しており、ジオラマを施した夢のMyサーキットを所有する。作り上げたスロットカーは数多く、全て超リアル志向の作り込みスロットカーである。
氏の拘りは、スロットカーにとどまらず、1/12スケールのフォーミュラ1の作りもこれまた凄まじい。80年代には、あのMr.Ken Tyrellに当時のタイレル(ティレル)F1モデルカーを自作し、贈呈したという。
 
 では、Mr.Klaus Tonnの作品群をご覧あれ!!
 

1/12 scale SHADOW MODELS by Klaus Tonn 

Leftside: pic-1    he is  by the detail shooting.
Middle: pic-2    the first basismodel.
Rightside: pic-3    begining the models.
(C) modeling, photogaraphs by Klaus Tonn.

 Mr.Klaus Tonnの最初に行なったことは、友人の所有する本物のSHADOWを隅々まで検証することだった。そして、その資料を元に1/12スケールに精密にスケールダウンさせたSHADOWを作るのが彼の最終目標だ。
 


Rightside & bottom: pic-4    detail from the gearbox and engine.
Leftside: pic-5    the riverside car ( front ) and the car now ( back ).
(C) Modeling, photographs by Klaus Tonn.

 クラウス氏は、シャーシを作る段階で、なんとリバーサイドでのテスト車仕様とAVS SHADOWの初代デザイナー“トレバー・ハリス”が最初に作り上げたシャーシを作り分けているのだ。現存し、彼の友人が所有するSHADOWは1969年プレス発表された時の仕様であるという。しかしながら、思わず息を呑んでしまう仕上がりではないだろうか。


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(C) Modeling, photographs by Klaus Tonn.

Text by Hirofumi Makino.